タイムトラベル理論
「タイムリープを知っているかい?」
『デロリアンですか?』
「確かに、タイムトラベルの代名詞だね。まあ、時空を越えるという意味では同じだね。」
『それで、タイムリープがどうかしたんですか?』
「タイムリープの方法を知っているかね?」
『先生には教えませんけどね。』
「知っているのか!?」
『知りませんよ。』
「・・・・・・まあ、いい。ネット上に、こんな話がある。タイムリープをするには、まずタイムリープの先になる出来事をずっと思い続けて、夢に見るようにする。そしたら、今度はそれが明晰夢になるようにする。」
『明晰夢というのは、ああ、これは夢だって思える夢ですか?』
「そうだ。そして、その夢の中での感覚を感じられるようにする。それを何度も繰り返していると、あるとき、その夢と現実が入れ替わる。タイムリープ成功だ。」
『それはかわいそうですね。』
「・・・・・・君は、現実と夢の区別が出来なくなってかわいそうとか思っているかもしれないが、そうじゃない。夢が現実になるんだ。そして、現実だった世界は夢になる。」
『やっぱりかわいそうじゃないですか。夢を現実だと思い込むんでしょう?』
「まあ、そう思うだろうな、普通は。私もそう思うよ。ただ、こうは考えられないか。タイムリープは、『意識』を別の時間軸に飛ばすことだと。」
『なるほど。』
「・・・・・・興味がなさそうな顔をしているが、まあいい。そもそも、私はタイムトラベルも時空を越えるというよりも別の時間軸を作り出すものだと思うのだよ。」
『へえ、そうなんですね。』
「だとすると、このタイムリープの方法もあながち適当な作り話だとも言えない。意識を過去に飛ばすというのは、別の時間軸を作り出すということだと考えられる。実際、タイムリープに成功したという人は、史実が違っていると言っているようだ。」
『別の時間軸ですからね。そうすると、デロリアンは必要なかったってことですね。』
「その通り!このタイムリープの話は、タイムトラベル、すなわち別の時間軸を作り出すのに特別な装置がいらない可能性を示唆している。『意識』というものの可能性を垣間見ることができるじゃないか。」
『そして、そこに物語ができる可能性がある、ですよね。どうせ。』
「・・・・・・まあ、そうだよ。その通りだよ。」
『なんだ。やっぱり、そうなんですね。てっきり、先生、今日からタイムリープを試みるのかと思いましたよ。』
「その時間軸に君がいないなら、ね。ところで――」
『いやですよ。私は書かないですよ。』
「意識とは何か。意識とは、世界を観測し、世界を作り出すものである。」
『なんでもいいですけど、小説書いてくださいね、先生。』