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reborn

作者: 葛沼純
掲載日:2014/05/06

「少し、例え話に付き合ってくれ」


「ああ。いいよ」


「例えばだ。目の前に一生を費やしても使いきれない程の大金がある」


「うん」


「けれど、それを手にするには自らの命を絶たなければいけない」


「うん」


「君なら……どうする?」


「そうだなー。死んでお金を貰うよ」


「その心は? 死んだらお金を使えないだろ?」


「いや、使えるよ。死んでも人は生き返るからね」


「なんだ。君は仏教徒なのか?」


「いや、僕は無宗教だよ」


「おや、そうか。てっきり君は輪廻転生なんかを信じてるのかと思ったが」


「そうだね。けど、考え方は同じかな」


「なるほど……それで、君は手に入れた大金をどう使う?」


「貯めとくよ」


「何故だ? 一生を使っても使いきれない金だぞ?」


「そうだけど、僕は欲しいものが無い。何にもね」


「そうか……それは残念だ」


「そういう君はどうするんだい?」


「俺か? 俺は――――」


「死にたくないからお金はいらない」


「――――その、通りだ。凄いな」


「いや、簡単な事だよ…………人は、死を怖れるからね」


「………………」


「死は、生きてる限り体験することは出来ない。体験することの出来ない事には、巨大な恐怖が付きまとう」


「………………」


「それなのに、人は簡単に人の命を奪う。可笑しな話だね。自分が死ぬのは怖いのに、人の命はあっさりと奪えてしまう」


「――――――」


「ふう……。さあ、お喋りもこのくらいで止めとくね――――さあ、僕を殺してもらって構わないよ」


「お前は……死を怖れないのか?」


「さっきも言ったじゃないか。僕は生まれ変わる」


「そんなこと――――――」


「そんなことはない。何てことこそないよ。君は何故、体験していないことをそう断言出来る?」


「それは…………」


「それは、ただ君がそうであってほしいと願っているだけだ。それをさも真実の様に話すのは滑稽な事だね」


「てめえ……!」


「まあまあ。あと数分で死ぬ相手に怒っても仕方ないだろ? 落ち着きなよ」


「チッ……」


「そうだ。それでいい……それで、最後に言いたいことはある?」


「それはこっちの台詞じゃねえのか?」


「そうだね。この体では最後になるんだね。ゴメンゴメン。もう繰り返しすぎて分からなくなってるんだ」


「何度も? てめえ、何度も死んでるのか?」


「うん、そうだよ。どうも僕は殺人鬼に好かれてるみたいでね。普通に生活してると、ある日突然殺されてしまうんだ――――今みたいにね」


「てめえも大変なんだな」


「おっと、同情はごめんだよ。それに、同情するならその手に持ってるナイフを下ろしてくれよ」


「あ……」


「いや別に下ろさなくてもいい。僕ももう死ぬ準備は出来てるからね。何回も体験しても中々慣れなくてね、痛いもんは痛いんだよ」


「――――なんだか、どうでも良くなってきたよ」


「ん?」


「俺は今までたくさんの人間を殺してきた。何人、何十にんと――――」


「あー待って待って」


「ころ――――は?」


「そういう自分語りは止めてくれない? もうこっちは聞き飽きてるんだよねー。で、纏めると何?」


「え、いや、あ…………お前を殺すのは止める」


「……………………」


「おい。何か言えよ」


「困るなー。困るなー。そんな事言われても困るよ。僕もう死ぬつもりだもん」


「何言ってるだてめえ? 死ななくて済むんだぞ?」


「だーかーらー! それは死を体験したことない人間のつまらない意見だろ? けどさ、僕はもう死んだことあるんだよね。それこそ何回何十回何百回とね」


「あー……俺にはよくわかんねえや」


「うん。まあ良いよ。馬鹿は馬鹿なりに頑張ってよ――――それで、いつ殺してくれんの?」


「――って、お前こそ馬鹿だろ!? さっき言ったよな? 殺さないって!」


「んだよ。俺の話を聞いて気が変わったと思ったけど……ま、いいか。それなら――――」


「お、おいてめえ!!」


「うっ…………く〜! やっぱ、痛いな〜これ」


「なに考えてんだてめえ!?」


「強いて言うなら、君達とは違うことかな。は、ははは!」


「はあ……付き合いきれねえ……んじゃ、俺は行くぞ。今度生まれたときは、殺されないようにな」


「おーけー…………………………」








「はあ……全く、今日は俺の人生の中でも最悪な日だぜ……」


「たく、あんなガキに説教されるとはな……俺もまだまだか」


『そうだね。君は大人としても人間としても未熟なままだ』


「!?」


『おいおい。そんなに驚かないでおくれよ。ほんの数分前まで楽しくお喋りしてたじゃないかー』


「てめえ、どこにいる!?」


『どこ。なんて言われてもなあ。君みたいな奴にも分かりやすく説明するならそう……君の中。とでも言うべきかな』


「俺の中……だと?」


『そうそう。どうも今回の行き先は君だったみたいだ』


「待て! てめえは新たな命として生まれ変わるんじゃねえのか?」


『うーん。普段はそうなんだけど。たまにあるんだよね。今回みたいに、生きてる人間の新たな人格として生まれることが』


「は、はあ?」


『まあそうなるよね。うん。けど我慢してくれよ。僕だって好きで君の人格になったんじゃないんだし』


「あぁ……これなら死んだ方がマシだよちくしょう」


『うん? ねえ君。今、死んだ方がって言った?』


「え? ああ。言ったけど――――」


『なら死んじゃおー!! 幸いな事に君は拳銃も持ってるみたいだしねー!! そいじゃあさいならー!!!!!』


「おいおいおい!? か、体が勝手に動いて――――――――」








「おぎゃー! おぎゃー!」


「おぎゃー! おぎゃー!」


「おおハニー。とっても可愛い双子ちゃんだ!」


「ええダーリン。お腹を痛めたかいがあったわ……」


「おぎゃー! おぎゃー!」


「おぎゃー! おぎゃー!」


「それでハニー。名前はどうする?」


「ダーリン。実はもう決めてあるのよ」


「おおハニー! 用意周到な所も好きだよ! それで、なんて、名前にしたんだい?」


「ええダーリン。この双子ちゃんの名前は――――」


リーとボーンよ。



思い付きで書きました。

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