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reborn

作者: 葛沼純

「少し、例え話に付き合ってくれ」


「ああ。いいよ」


「例えばだ。目の前に一生を費やしても使いきれない程の大金がある」


「うん」


「けれど、それを手にするには自らの命を絶たなければいけない」


「うん」


「君なら……どうする?」


「そうだなー。死んでお金を貰うよ」


「その心は? 死んだらお金を使えないだろ?」


「いや、使えるよ。死んでも人は生き返るからね」


「なんだ。君は仏教徒なのか?」


「いや、僕は無宗教だよ」


「おや、そうか。てっきり君は輪廻転生なんかを信じてるのかと思ったが」


「そうだね。けど、考え方は同じかな」


「なるほど……それで、君は手に入れた大金をどう使う?」


「貯めとくよ」


「何故だ? 一生を使っても使いきれない金だぞ?」


「そうだけど、僕は欲しいものが無い。何にもね」


「そうか……それは残念だ」


「そういう君はどうするんだい?」


「俺か? 俺は――――」


「死にたくないからお金はいらない」


「――――その、通りだ。凄いな」


「いや、簡単な事だよ…………人は、死を怖れるからね」


「………………」


「死は、生きてる限り体験することは出来ない。体験することの出来ない事には、巨大な恐怖が付きまとう」


「………………」


「それなのに、人は簡単に人の命を奪う。可笑しな話だね。自分が死ぬのは怖いのに、人の命はあっさりと奪えてしまう」


「――――――」


「ふう……。さあ、お喋りもこのくらいで止めとくね――――さあ、僕を殺してもらって構わないよ」


「お前は……死を怖れないのか?」


「さっきも言ったじゃないか。僕は生まれ変わる」


「そんなこと――――――」


「そんなことはない。何てことこそないよ。君は何故、体験していないことをそう断言出来る?」


「それは…………」


「それは、ただ君がそうであってほしいと願っているだけだ。それをさも真実の様に話すのは滑稽な事だね」


「てめえ……!」


「まあまあ。あと数分で死ぬ相手に怒っても仕方ないだろ? 落ち着きなよ」


「チッ……」


「そうだ。それでいい……それで、最後に言いたいことはある?」


「それはこっちの台詞じゃねえのか?」


「そうだね。この体では最後になるんだね。ゴメンゴメン。もう繰り返しすぎて分からなくなってるんだ」


「何度も? てめえ、何度も死んでるのか?」


「うん、そうだよ。どうも僕は殺人鬼に好かれてるみたいでね。普通に生活してると、ある日突然殺されてしまうんだ――――今みたいにね」


「てめえも大変なんだな」


「おっと、同情はごめんだよ。それに、同情するならその手に持ってるナイフを下ろしてくれよ」


「あ……」


「いや別に下ろさなくてもいい。僕ももう死ぬ準備は出来てるからね。何回も体験しても中々慣れなくてね、痛いもんは痛いんだよ」


「――――なんだか、どうでも良くなってきたよ」


「ん?」


「俺は今までたくさんの人間を殺してきた。何人、何十にんと――――」


「あー待って待って」


「ころ――――は?」


「そういう自分語りは止めてくれない? もうこっちは聞き飽きてるんだよねー。で、纏めると何?」


「え、いや、あ…………お前を殺すのは止める」


「……………………」


「おい。何か言えよ」


「困るなー。困るなー。そんな事言われても困るよ。僕もう死ぬつもりだもん」


「何言ってるだてめえ? 死ななくて済むんだぞ?」


「だーかーらー! それは死を体験したことない人間のつまらない意見だろ? けどさ、僕はもう死んだことあるんだよね。それこそ何回何十回何百回とね」


「あー……俺にはよくわかんねえや」


「うん。まあ良いよ。馬鹿は馬鹿なりに頑張ってよ――――それで、いつ殺してくれんの?」


「――って、お前こそ馬鹿だろ!? さっき言ったよな? 殺さないって!」


「んだよ。俺の話を聞いて気が変わったと思ったけど……ま、いいか。それなら――――」


「お、おいてめえ!!」


「うっ…………く〜! やっぱ、痛いな〜これ」


「なに考えてんだてめえ!?」


「強いて言うなら、君達とは違うことかな。は、ははは!」


「はあ……付き合いきれねえ……んじゃ、俺は行くぞ。今度生まれたときは、殺されないようにな」


「おーけー…………………………」








「はあ……全く、今日は俺の人生の中でも最悪な日だぜ……」


「たく、あんなガキに説教されるとはな……俺もまだまだか」


『そうだね。君は大人としても人間としても未熟なままだ』


「!?」


『おいおい。そんなに驚かないでおくれよ。ほんの数分前まで楽しくお喋りしてたじゃないかー』


「てめえ、どこにいる!?」


『どこ。なんて言われてもなあ。君みたいな奴にも分かりやすく説明するならそう……君の中。とでも言うべきかな』


「俺の中……だと?」


『そうそう。どうも今回の行き先は君だったみたいだ』


「待て! てめえは新たな命として生まれ変わるんじゃねえのか?」


『うーん。普段はそうなんだけど。たまにあるんだよね。今回みたいに、生きてる人間の新たな人格として生まれることが』


「は、はあ?」


『まあそうなるよね。うん。けど我慢してくれよ。僕だって好きで君の人格になったんじゃないんだし』


「あぁ……これなら死んだ方がマシだよちくしょう」


『うん? ねえ君。今、死んだ方がって言った?』


「え? ああ。言ったけど――――」


『なら死んじゃおー!! 幸いな事に君は拳銃も持ってるみたいだしねー!! そいじゃあさいならー!!!!!』


「おいおいおい!? か、体が勝手に動いて――――――――」








「おぎゃー! おぎゃー!」


「おぎゃー! おぎゃー!」


「おおハニー。とっても可愛い双子ちゃんだ!」


「ええダーリン。お腹を痛めたかいがあったわ……」


「おぎゃー! おぎゃー!」


「おぎゃー! おぎゃー!」


「それでハニー。名前はどうする?」


「ダーリン。実はもう決めてあるのよ」


「おおハニー! 用意周到な所も好きだよ! それで、なんて、名前にしたんだい?」


「ええダーリン。この双子ちゃんの名前は――――」


リーとボーンよ。



思い付きで書きました。

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