字面
「そう言えばもうすぐ、学年末テストだね」
「嫌ですね……」
教室にある日程表を見ながら、話題にでもと思ったのですが、さっそく月ちゃんが肩を落としてしまいました。
テストが嫌なわけではないですが、嫌だと言う気持ちは分からなくもないです。
「テスト前とか緊張するよね」
「桃さんでもそうなんですか?」
「そうだよ。どんな問題出されるかなって考えるとドキドキしちゃうから」
「何かちょっと意外ですね」
意外……でしょうか? やっぱり、悪い点を取ってしまうのは怖いのですが。
隣で話を聞いていた雪ちゃんが、「なあ」と声をかけてきました。
「雪ちゃん、どうしたの?」
「テストって今やっているところから出るんだよな?」
「出るとは思うけど、分からないところがあるの?」
「ああ、国語の教科書なんだけどな。
ここ『ようやく』ってちょっと変だよな?」
雪ちゃんが『暫く』と言う文字を指さします。すぐに間違いに気が付きました。
「それ『ようやく』じゃなくて『しばらく』だよ」
「……そうなのか? せっかく、教科書が間違ってるで、点数稼ごうと……」
悪い事を言う雪ちゃんの頭を月ちゃんが叩きます。
うらめしそうに見る雪ちゃんに、月ちゃんが「授業でやったでしょ?」と言うのですが、雪ちゃんが「寝てた」と短く返しました。




