手持ち
「お正月の時で、小雪がお年玉を自慢していたのをふと思い出したんですけど」
「それがどうしたの? 月ちゃん」
お昼休み、皆で集まっている時に月ちゃんが話を切り出しました。
お年玉がどうのって事はお金に関する事だとは思うのですが、ちょっとあたしは混ざりたくない感じがします。
「この前、本屋さんに行った時に、欲しい本がいっぱいあって買えなかったんです」
「お年玉とどんな関係があるの?」
「あ、お年玉はきっかけで別に関係があるわけじゃないんです。
ふと、お財布にいくら入っていたら安心できるのかなって思いまして」
「月はいくらなの?」
「私は二千円くらいでしょうか。
一万円以上入っていると逆に不安になってきますね」
月ちゃんが冬ちゃんの質問に躊躇う事無く答えます。
続いて、月ちゃんが冬ちゃんに問い返しました。
「わたしも月と同じくらいかな。
ちょっと欲しいものがある時に、二千円くらいあったら十分だからね」
「私もそう思っていたんですけど、この前は違ったんですよね。
狙いすましたかのように、五冊も六冊も一気に出るんですから」
月ちゃんが理不尽に頬を膨らませますが、すぐにしぼめてあたしの方を見ました。
「桃さんは高そうですよね」
「えっと、一万円……かなあ。買い物に行った時に、それくらいあった方が安心だから」
「主婦ですね」
「まあ、桃は学生だから主婦じゃないけどね」
「お金があったら私が雇いたいです」
何だか話が分からない方に進んで行ってしまったので、適当に話を合わせる事にしました。




