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妹と兄、ぷらすあるふぁ  作者: 姫崎しう
いちねんめ
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転校

 九月のなりわたしは新しい学校に行くことになりました。所謂転校と言うやつですが、もう何度目かわからないわたしにしてみれば何の楽しみもなければ、不安もありません。


 両親はもう転校することはないと言っていましたがその言葉も二、三回聞いたので信用もできません。


 つまり、今まで通りクラスで目立たないように過ごせばいいわけです。ただ場所が変わるだけ。


 そう思っていたのですが、担任の先生にわたしの名前をクラスメイトに伝えたときいつもより少し反応が違いました。


 初めはよくわからず、言われた席に座って何時ものように休み時間になるとやってくるクラスメイトからの質問攻めに作り笑いを浮かべながら答えていました。


 しかし、その中の一人が急に質問以外のことを口にしました。


冬華とうかちゃんっていうんだ。じゃあ、ふゆちゃんだね」


 急に愛称を付けられてしまったわたしが戸惑っているといつの間にかクラス中に広まってしまって、その日からクラスでわたしは冬華ではなく冬と呼ばれるようになりました。


 それでも、何とか一日を終え放課後になった時にわたしはその子に出会いました。


 どういうわけかその子は放課後になるまで私の所に来ることはなく、それからわたしに話しかけるのをためらっているようでした。


 わたしは特に気にかけることはせずにいたのですが、その子は放課後になってようやくわたしに声をかけてきました。


「貴女も『とうか』って言うんだね」


「貴女もって事は、あなたもそうなの?」


 その一言目に少し驚いたのでそう尋ねると、その小柄な女の子は頷きました。


「でも漢字は違ってあたしは桃の花って書いて、友達からは『モモ』って呼ばれることが多いんだけどね」


 それを聞いてようやく自分が冬と呼ばれるようになったのかを納得できた。


「それで、わたしに何か御用?」


 務めて丁寧に。あたりさわりがないようにそう尋ねる。そうしないと変な問題に巻き込まれるかもしれないから。


 しかし、モモと名乗った女の子は首を振った。


「別に用事って程でもないんだけど、今日は皆転校生が来たってはしゃいじゃっててごめんね。でもたぶん明日からは皆普通に接してくれると思うから、楽しんでくれたら嬉しいな」


 「それじゃあね」とモモは足早に帰ってしまった。心のどこかで嵐のような子だったなと冷静に考えながら、小柄な割にほかの子よりもどこか大人びているような感じがしているとも思った。


 そして何より、


「楽しんでないって気づかれてたみたいだよね……でも、わたしあんまり楽しむ気なんてないんだけどな……」


 結局は次の引っ越しまで当たり障りなく、平和に過ごせたらいい。そもそも楽しむってどういうことなんでしたっけ?

 小学生の時は特に、相手をしてもらうのが年上ばかりだと同世代からはその分大人っぽく見られたりします。

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