マーケティング
「今日英語の授業があったのよね」
「お前授業とってたのか?」
「まあ、軽い手伝いで今日だけ出たって感じよ」
ねぇねの言葉にお兄ちゃんが安心した様に息を吐きました。
大学生の事は分からないですが、ねぇねもお兄ちゃんももうほとんど授業を取っていなかった記憶はあります。
「だから基本的にプリント配ったり、課題回収したり以外は眺めているだけだったんだけど、今日の授業は半分発表会みたいな感じでね。
驚いた話の中に嘘を混ぜて、どの話が嘘だったかみたいな事をしていたのよ」
「そういう授業があるんですね。面白そうですけど、難しそうです」
「私は聞いている側だったから楽しかったわね。
で、何人か発表している中に『本を出版しました』って話があってね」
「それは凄いですね」
思わず驚くとねぇねが首を振りました。
始めはどういう事だろうかと思いましたが、なるほど、嘘だったわけですか。
「どうやら本当は、その子の友人が本を出したみたいなんだけど、発表の時にタイトルとか出版社とかペンネームとか全部言っていたし、見事に宣伝して行ったわね。
これなんだけど、ダイレクトマーケティングなのかしら? それともステルスマーケティングなのかしら?」
「多分前者だと思うが、お前が気にするところはそこなんだな」
「何? 嫉妬とかしたほうが良かったかしら?」
不満そうな顔をするねぇねにお兄ちゃんはやれやれと言った具合に首を振りました。
『花鳥風月』本日発売します(ダイレクトマーケティング)




