難聴系主人公
「難聴系主人公って居るじゃないですか?」
「えっと、月ちゃん。難聴系主人公って何かな?」
「あの、肝心な事は聞き漏らしてしまう主人公……で良いでしょうか?
ヒロインが告白している時に限って、別の事に意識がいってしまっているヒーロー……って感じです」
「それならわかるかも」
確かにいます。難聴と言われるかはわかりませんが、タイミングよく車が通って告白が聞こえないとかもよくありますよね。
聞こえてしまえば物語的に問題があるのは分かるのですが、ちょっと無理矢理かなと思う事もあります。
「話を続けますと、これを難聴系主人公と言うのはどうなんだろうって思うんですよ」
「そうなの……かな?」
あたしが首を傾げる前で月ちゃんが何やら口を動かしました。
何か言っているような気もしたのですが、空気だけ吐いているような感じもしてはっきりとはわかりません。
「何ていったか分かりましたか?」
「やっぱり何か言ってたんだね。でも、全然分からなかったよ」
「たぶん、主人公も似たようなものだと思うんですよね。
言っている側も主人公に聞いてほしいようなそうでもないようなって心境でしょうから。
だから、今の私の言葉を聞けている読者や視聴者側が地獄耳なんですよ。
言ってしまえば地獄耳系読者です」
今のように説明してもらうとそんな気がするのですが、ちょっと極端な様な気がします。
そう思ったのが、月ちゃんに分かってしまったのでしょうか「さっきのは極端でしたね」と隣りにいた雪ちゃんの方を見ました。
「ね、小雪はどう思う?」
「ん? あ? あ、あれだろ。軟骨の話だろ? 美味しいよな!」
自信満々に答える雪ちゃんの横で、月ちゃんがあたしに目配せをしました。




