文化祭
「九月だ、秋だ」
今日の昼休み、雪ちゃんが思い出したかのように言い出しました。
「どうしたの雪、急にそんな事言い出して」
「良いんですよ。小雪の事は放っておいても」
冬ちゃんと月ちゃんが、また変な事を言い出した、といった顔をします。
雪ちゃんは気にした様子もなく話を続けました。
「秋と言ったら文化祭だろ?」
「確かにそう言うイメージだよね。でも……」
何だか嫌な予感がして、あたしがちょっと雪ちゃんに確認しようとしたら、冬ちゃんがあたしの口を塞いでしまいます。
冬ちゃんの手は少し冷たくて気持ちが良いのですが、何故口を塞がれたのか分からずに冬ちゃんの方を見ると、冬ちゃんは首を振りました。
「どうしたんだ? 桃リロス」
「何でもないって」
代わりに冬ちゃんが答えるのは良いのですが、桃リロスって何なんでしょう。
桃が入っているのであたしの事を言っているのだとは思いますが。
「そうか。ともかく、文化祭だ。焼きそばに焼き栗に焼き茄子に焼きトウモロコシに焼き芋に、焼き……
まあ、文化祭だ。楽しみだよな」
「焼き○○以外には何も思いつかないって言うのも凄い話だよね。
文化祭があるにしても、焼きそばくらいじゃないかな? ありそうなの」
「焼き栗は外せな……冬野、今何って言ったか?」
「焼きそばくらいじゃないかな?」
「その前」
「文化祭があるにしても」
何だかこんな会話を聞くのは初めてなような気がします。結構、ドラマなんかだと見るような気がしますが。
あと、冬ちゃんは冬野なんですね。
雪ちゃんが、現実を確かめるように何度も瞬きをします。
「もしかして……」
「あのね、雪ちゃん。この学校文化祭ないんだよ」
「あーあー」
あたしの言葉を雪ちゃんは耳を塞いで聞かないようにしていました。




