距離感
いつも家にやってくるねぇねですが、今日は一段と楽しそうにやってきました。
「ねえ、妹ちゃん……とついでにあーにぃ」
「ついでってなんだよ。あと、俺はお前の兄になった記憶はない」
楽しそうに話すねぇねとは対照的にお兄ちゃんはとても嫌そうな声を出します。
ねぇねはそんなお兄ちゃんの態度を気にする様子もなく楽しそうなまま続けます。
「今度の金曜とか暇じゃない?」
夏休みですから、基本的にいつでも暇と言ってしまえば暇です。友達から遊びに誘われるのは前日とかが多いですし。
そう思ってお兄ちゃんの方を見ると、とても複雑な顔をしていました。たぶん暇なのでしょう。
「あたしは、暇だよ?」
あたしが言うと、お兄ちゃんは少し諦めたような表情を作ってから口を開きます。
「確かに暇だが、何かあるのか?」
ぶっきら棒なお兄ちゃんの返しに対してねぇねは「ふっふー」と意味ありげな笑いを見せます。
「実はね、あの小説の舞台となったところが隣の県にあるらしいのよ」
ここでねぇねが言っているある小説とはお兄ちゃんも持っている小説のことで、あたしも一度読ませてもらったことがあります。
胸を張って言うねぇねを見た後、思わずお兄ちゃんの方を見ると、いつもと変わらない様子を装いつつそわそわしているのが丸わかりでした。
しかし……
「隣の県って遠くないですか?」
正直隣の市でさえ遠いと思うのですが……ねぇねの言い方だとまるで隣町にあるかのような感じもします。
ねぇねとお兄ちゃんは顔を見合わせると、ねぇねの方から話し始めました。
「確かに妹ちゃんにしてみたら遠いかもしれないけど、朝早めにいけば日帰りもできると思うよ?」
「それに、計画はこいつが立てるだろうから、妹は気にしないで楽しめばいい」
いつの間にか行く気になっているお兄ちゃんです。でも、日帰りできるということは近いのでしょうか?
「私が考えるの?」
「言い出したのはおまえだろ?」
ねぇねとお兄ちゃんがそんなことを話していましたが、あたしは少し距離という者が分からなくなっていました。
小学生のころはバスに乗るだけでちょっとした旅行気分だった気がします。




