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妹と兄、ぷらすあるふぁ  作者: 姫崎しう
いちねんめ
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朝顔

 今年の夏休みあたしは自由研究に朝顔の観察を行うことにしました。そのため六月の終わり頃に種をまき、お世話をしながら、観察だけでは物足りないだろうと何か実験ができないかと色々と準備をしてきました。


 しかし、夏休みになった今でも芽が出る気配すらしません。


 それをお兄ちゃんに話すと「もう諦めて別の研究に変えた方がいい」と言われました。


「でも、あーにぃ……あたし今までずっと準備してきたんだよ?」


 まさか諦めろなんて言われると思っていなかったので、ショックで目に涙がたまってきます。


 まるで、今までのあたしの苦労が無駄だったといわれているようでした。そんなあたしの様子を見てもお兄ちゃんは変わらず


「ひと月近く経っても芽がないって事は種が悪かったんだろう。お兄ちゃんも一緒に考えるから新しい研究に……」


 と言って来ます。だからあたしは涙が流れてくるのを気にすることなく首を振ります。


「そんなことないもん。色々考えてたのに、今更諦めろなんてあーにぃ酷いよ」


 そう言ってあたしは自分の部屋に閉じこもりました。


 薄暗い部屋の中電気をつけずに、流れてくる涙も気にすることなく膝に顔をうずめて一人泣きました。


 しばらくして、だいぶ冷静になれたときお兄ちゃんの言っていたことの方が正しいことに気が付きました。このまま芽すら出てこなかったなら間違いなくあたしは自由研究ができません。


 お兄ちゃんがそこまで考えていたことに気が付いたとき、子供っぽく喚いていた自分が恥ずかしくてお兄ちゃんに合わせる顔がありません。そんな時足音が聞こえてきて、あたしの部屋の前と思われる場所で止まりました。


「なあ、妹よ」


 扉越しにお兄ちゃんの声が聞こえてきますが、あたしは何も答えることができません。


「お兄ちゃんの言い方も悪かったと思うが、やはり観察は諦めた方が……」


「ううん、あーにぃは悪くないよ」


 恐る恐るドアを開けてあたしはお兄ちゃんの言葉を遮ります。それから、まだお兄ちゃんの顔は見ることはできませんが、できるだけ笑顔を作って


「新しいの考えるからあーにぃも手伝ってくれる?」


 とたずねました。

たぶん今すぐ種を蒔き直せば夏休みが終わるまでには開花するんじゃないかと思います

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