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妹と兄、ぷらすあるふぁ  作者: 姫崎しう
いちねんめ
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喪失

 初めてねぇねが家にやってきた日から、ねぇねは度々家に来るようになりました。


 今日もねぇねが「ご飯食べさせろ~」と家にやってきたところです。


 夕飯の時間帯、少し寂しげな雰囲気の中玄関の扉を開けるとあらわれたねぇねはいつも以上に美人さんに見えましたが、その一言で一気に雰囲気が台無しになってしまいました。


 でもそれはそれでねぇねらしいかなとクスクスと笑うと、「なによぉ」とねぇねがあたしの頬っぺたを笑いながらむにむにしてきました。


 そんなやり取りがあって、あたしがキッチンに向かいねぇねは迷うことなくリビングに向かいました。


 そこにはいつものようにお兄ちゃんがいて、「またか」と諦めたようにねぇねの姿を見るとすぐに視線をテレビに戻しました。


「ご挨拶ね。今日はちょっと面白い話を持ってきたっていうのに」


 ねぇねの面白い話? 少し気になります。何せ小説家になりたい方が面白いという話ですから。


 しかし、お兄ちゃんはそんなに期待していないのか「話してみ」と適当に言います。


「昨日、パソコンで小説を書いているときにね。『もしつ』って打っても全然変換されなくてどうしてかなって思って……」


 『もしつ』? 『もしつ』ってなんでしょう? あたしが首をかしげるのと同じタイミングでお兄ちゃんも不思議そうな表情を見せます。ねぇねはいつものように楽しそうに話を続けます。


「辞書で調べてみたんだけど、あれって『そうしつ』って読むんだね」


 お兄ちゃんが呆れた顔をしたのがわかりました。


「もしかして、喪失って読めなかったのか?」


「いや、読めはしてたんだけど、なんか書くときにはもしつって考えていたらしくてね」


 コロコロとねぇねは笑いますが、お兄ちゃんの表情はどんどんなくなっていっているような感じがします。


「お前は小説家志望だったよな?」


「だから面白いんでしょ?」


 ねぇねがポカンとして首をかしげます。お兄ちゃんはうなだれています。


「わかった。今度から喪失のルビを『ロスト』にしてしまえ」


「なるほど。英語にすれば少なくとも間違っても意味は通ると……つまり、今後ノーベルをライトするときはカンジをイングリッシュとシンクしながら……」


 ねぇねがわざとらしくそういうと、お兄ちゃんが「俺が悪かった」と頭を下げます。その意図を知ってから知らずか、ねぇねはいたずらを思いついたかのように楽しそうな表情を浮かべると、


「『黒髪黒眼のお兄ちゃん』のルビを『ブラックカラービッグブラザー』みたいにすればいいんでしょ? わかってるって」


「許してください。お願いします」


 とうとうお兄ちゃんが土下座をし始めてしまいました。

途中までリアルにあった話。読めるじゃん『もしつ』って……

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