表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹と兄、ぷらすあるふぁ  作者: 姫崎しう
いちねんめ
296/1000

300円

 新学年になって最初の楽しみは新入生のための歓迎遠足です。


 木曜日の今日はその前日。冬ちゃんと帰りながら、あたしはわくわくしていました。


 相変わらず冬ちゃんがクールだったんですけどね。


 家につくと明日遠足だとお兄ちゃんとねぇねに伝えました。お兄ちゃんには前もって伝えてはいたので初めて知ったのはねぇねだけだと思うのですが。


「遠足と言えばあれよね」


「バナナはおやつに入りますか?」


「まあ、それも定番ではあるけど違うわ」


 話を聞いたねぇねの言葉にお兄ちゃんが即座に反応します。確かに男子の中の一人くらいは必ず先生に聞くような話です。


 でも、バナナをおやつに入れてしまうと果物が全体的におやつになってしまうと思いますし、そもそも何が果物で何が野菜か判断に困るものもたくさんあります。栗とか。


「何でおやつが300円なのか……ですよね」


「そうそう、さすが冬華ちゃん」


 ねぇねが楽しそうに冬ちゃんの言葉にそう返したところで、お兄ちゃんが口を開きます。


「300円で上手くやりくりできるようにする。あまり多く持ってきてもらっても困るから仮に設定しておく。まあこんなところじゃないか?」


「まあ、そう言う名目だとは思うんだけどね。お菓子が300円であるかどうかなんて確認されたことある?」


 そう言われると300円までだとは念を押されていますが、調べられた記憶はありません。お兄ちゃんが首を振っている所を見ると、昔からそうらしいです。


「それで、絶対300円以上持ってくる子っているじゃない?」


「つまり、いかに自分を律するかって事か?」


 お兄ちゃんの言葉にねぇねは困ったように唸ります。


「結局はそう言うことに近いとは思うんだけど。要するに多少ずるした方が得をする、そんな世の中の縮図みたいじゃない? 小さな罪悪感を無にする訓練みたいな」


「それってどういうことなんですか?」


「赤信号だな」


 ねぇねの言葉の意味が理解できずに尋ねると、答えはお兄ちゃんから返ってきてねぇねがよくわからない顔をしました。


 勿論の事あたしもよくわからないのですが、でもお兄ちゃんの言っている赤信号がねぇねとまだ出会う前にお兄ちゃんに尋ねたあの赤信号なんだろうなと言う事は解りました。



 遠足にラスクとか持っていくのはお勧めしません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ