襲来
ねぇねが家に来てお兄ちゃんが約束した通り皆でご飯を食べることになりました。
はじめねぇねが「約束だったでしょ?」とお兄ちゃんに言ったとき「まさか、本気で来るとは思わなかったよ。そもそもどうやって住所調べた」などと言っていましたが、結局お兄ちゃんが折れた形であたしは今三人分のご飯をつくっています。
あたしとしては別に三人分作るのは構わないのですが、ねぇねとお兄ちゃんが一緒に居るのは少しだけもやもやします。どういうことでしょうか。
そのせいでしょうか、リビングでの二人の会話についつい耳を傾けてしまいます。
「もしかして、家事全部妹ちゃんにさせてるんじゃないの?」
「まあな。でもお前には関係ないだろう」
「関係あるわよ。ねぇねだし」
あたしが家事をやっているのはお兄ちゃんに恩返しがしたいからで、あたしが好きでやっていることなんです。と言いたいですが、この距離からだと言うに言えません。
それにあたしが会話を盗み聞きしていることもあまり知られたくないです。
そんなことを考えていると、お湯が沸く音がしたのでハッとして手を動かします。今日のお昼ご飯はミートソーススパゲッティです。本当は親子丼とかで済ますつもりでしたが、ねぇねが居るので少しだけお洒落にしてやろうと思い急遽変更しました。
でも、そんなに難しいわけではないので手を動かしながらまた盗み聞きです。
「そもそも、ねぇねって何なんだ?」
「お姉ちゃんってことよ。あーにぃ」
ねぇねとはそう言うことだったのかとちょっと驚きです。
でも、そうだとすれば「お姉ちゃん」と呼ぶのは駄目なのでしょうか?
「それだったらわざわざねぇねじゃなくてもよくないか?」
お兄ちゃんも同じことを考えたらしくねぇねにそう尋ねます。
「あんな可愛い子に自分はあーにぃと呼ばせて、私がねぇねと呼ばれることは問題があると? そもそもあんな可愛い妹に家事を全部やらせるとかこの鬼畜。妹さんを嫁にください」
「何言ってんだか……」
まさにお兄ちゃんの言う通りなのですが、あーにぃとはあたしが昔からそう呼んでいるだけで特に意味などありませんし、あたしは別にねぇねが良いならねぇねをねぇねと呼ぶのも問題ありません。
でも、なんだかほんの少しだけ安心できた気がします。
料理が終わってお皿をリビングに持っていきます。三つ一気には持っていけませんからまずは二つ。
すると、ねぇねが目を光らせてこちらを見てきます。
「これ。妹ちゃんが作ったの?」
ねぇねがそう聞いてくるので、頷いて答えます。
それから、あたしがお皿をテーブルに置くまでそれを見続け、そして置いてからもお皿を凝視していました。
急いで最後の一つを持ってこようとキッチンに向かう途中お兄ちゃんが姿を現して思わず「わっ」と驚いてしまいます。
「妹か、できればフォークを持ってきてくれ」
そう言うお兄ちゃんの手には最後のお皿があり、あたしは頷いてフォークとスプーンを箸立てに立ててそれを持っていきます。
昼食の用意が終わり皆席に着くとねぇねが真っ先に手を合わせフォークとスプーンを手に持ち、器用にスパゲッティを巻き食べ始めました。
それを呆れながら見ていたお兄ちゃんが次に食べ始め、あたしが最後にスパゲッティをまき始めます。
ねぇねは半分ほどを美味しそうに一気に食べると「何これおいしい」と驚きの声を上げます。何と言うかここまで美味しそうに食べてくれるのは嬉しいですが、どこか照れてしまいます。
「確かに料理が出来ない人が作るなんて馬鹿げているレベルだけどさ、やっぱり家事は手伝った方がいいんじゃないの?」
ねぇねはそう言うと「ね、妹ちゃん」と同意を求めてきますが、あたしはそれに同意はできないので困ってしまいます。
でもあたしが、何かを言うより前にお兄ちゃんが話し始めました。
「別に料理が出来ないわけじゃないんだがな」
「うそっ!? じゃあ、今日の夕飯は貴方が作ってよ」
「別に作るのは構わんが、しれっと夕飯までここで食べようとしてるだろ」
お兄ちゃんが呆れた声でそう言うとねぇねは「っち、ばれたか……ごちになります」と演技っぽく言いました。
実は久しぶりにお兄ちゃんの作った料理が食べられるかもしれないという事で少しとは言わず、この日の夕飯が楽しみになったのは内緒です。
キャラが増えた途端今までなんか雰囲気がガラッと変わってしまった。でもねぇねは基本あのキャラです。
名前? 考えるのが面倒なのでだれか考えてくd(ry




