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妹と兄、ぷらすあるふぁ  作者: 姫崎しう
いちねんめ
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夜桜

 4月に入りもう桜もだいぶ花開いてきた。


 場所によって今まさに満開だなんて所もあるのではなかろうかと思うのだが、私の住む町では満開まではもう少しと言ったところだろうか。


 夜もだいぶ暖かくなり歩いている分には少し冷える今ぐらいがちょうどいいような気もする。


 その日も妹ちゃんの家から歩いて帰っていた。一人夜の道……と言っても街灯があるのでほとんどの場所が明るくはあるのだけれど、たまに切れていたり、そもそも設置されていなかったりで真っ暗なところもある。


 桜が咲いているのもちょうど暗くなっている所で、学校か何かなのか桜は塀の向こうにあり、暗い中にぼんやりとグレーに桜が見えていて夜桜を楽しむと言った感じでは無かった。


 数メートルほど続く桜の道の一番最後になってようやく街灯が復活し、一本だけ光に照らされた桜を見る事ができた。


「こうやって見ると綺麗なのよね」


 人口の光に照らされている桜を見上げながら足を止め、誰に言うでもなくそうつぶやくと、先ほどまで通過してきた灰色の桜の方を見る。


 今の私はこうやって光の下にある桜を見る事ができるけれど、かつての人はそんなことができたのだろうか。


 それとも、人工的な光のなかった時代には街灯とはまた違った自然の光によってまた違った桜を楽しむことができたのか。


 次の日にその事を不本意ながら秋人に言ってみると「らしくないな」と返ってきたので、「何がよ」と不機嫌に返してやった。


「確かに昔は今とは違った楽しみができたかもしれない。でも、昔は今のような楽しみ方はできなかっただろうし、この先だって今みたいに桜を見続けることができることはできない……違うか?」


「そうね」


 正論を言われたことよりも、普段の私が言いそうな事を返されたことが何処か納得できなくて、不機嫌なままで返した。


 ただ、妹ちゃんが目を真ん丸にしてよくわからないと言った顔をしていたのを見れたことは行幸だったかもしれない。

 夜桜は友人の家の帰り道で。月に照らされた桜は想像するしかありませんでした。

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