ボールペン
今日家に帰ると、ねぇねがテーブルの上を睨みつけていました。
それでもあたしの姿を見ると「お帰り妹ちゃん」と声をかけてくれます。
あたしもそれに「ただいまです」と返してからねぇねに問いかけました。
「何しているんですか?」
ねぇねはすぐにはあたしの質問に答えてはくれず、少ししてからこちらを向いてから答えてくれました。
その顔はどこかやりきったと言った表情です。
「ちょっと、ボールペンで書かないといけない書類の下書きをしてたのよ。薄く書かないと後から消えないから神経使っちゃって」
笑顔で言うねぇねを見ていると、それがいかにた変だったのか分かるようです。
「紅茶でも飲むか?」
そんなねぇねを見てか、珍しく気の利いた言葉を言います。
ねぇねは特に怪しむ様子もなく「頂戴」と言ってテーブルにパタリと倒れました。
あたしもお兄ちゃんに紅茶を入れてもらい――とは言っても、あたしはミルクティーにしてもらいましたが――一息ついてからもう一度ねぇねがテーブルにある紙と睨めっこを始めました。
それから約二十分と言うところでしょうか、ねぇねの叫び声が聞こえてあたしは驚いてしまいました。
「どうしたんですか?」
あたしが尋ねると、ねぇねは少しの間放心したように何も言わず、それから涙目であたしの方を見ます。
「手が疲れたから少し休憩してたんだけど、休憩開けてボールペンを使ったらインクの出が悪くて悪戦苦闘しているうちにね……」
そう言って見せてくれた紙のボールペンで書かれてある所の最後の文字は少しだけ二重になっていました。
「あんたが珍しく私に気を使ったから~」
ねぇねの逆恨みが部屋に響きましたが、お兄ちゃんはまるで知らん顔をしていました。
今日のボールペン様は機嫌が悪い




