7話
そしてまた窓から外を見る。
「ほら、おっかけたちが騒いでるじゃない。」
アリアのせいで。
ランの言葉にそう繋がったような気がしたのはきっときのせいでない。
私はやっと冷めてきた紅茶を口に入れた。
「そうそう、アリア聞いた?お葬式のときにお供えする花あるじゃない?あれ、いきなり誰かが買い占めて町に今全然ないんですって。」
私は頑張った。
口に入れた紅茶を吐き出さないように。
誤って気管に入りそうになったが、むせながらも早くその先の事を知らなければいけないと思った。
ある程度むせがなくなると私は急いで聞いた。
「それどういうこと!?」
「なんか、買い占めた人がいるんだって。偉い人でも亡くなったのかな?」
そんな話は全く聞かない。
ランもどなたかが亡くなったという事は聞いていない。だから疑問に思っているのだろう。
私はだんだん嫌な予感がしてきた。
まさかとは思う。
が、彼は信用できない。
常人の考えかたが通用しないのだから。
私は自分の中に浮かんだ考えを一生懸命否定した。
しかし恐い事に、完璧に否定しきれなかった。
私がやったことではないのに、町の人々を混乱させたことについて罪悪感を感じてしまっているのはなぜだろう。
私は、妙に緊張していることに気付いていた。
深く息を吸う。息をはいたと同時にドアをノックした。
「はい。」
女性の柔らかい声が聞こえた。
ドアが開いたとき、私は最初に見えたサラリラ・サラサの美しさに目を奪われた。
「…どなた?」
私ははっとして頭をさげた。
「突然申し訳ございません。私は第三武中佐補佐官アリア・ティンメルミアと申しま」
椅子が倒れる音がした。
私の自己紹介、あと少しだったのに。
私は奥を覗き込んだ。
机に両手をついて立ち上がっている奴がみえた。
隣には椅子が転がっている。
奴は、真っすぐこちらを見ていた。
「ルイリエン様?」
サラリラの戸惑った声に、私はサラリラに視線を向けた。
すると彼は私の前までてくてく歩いてきた。
「…何故?」
私は私より背の高い彼を見上げながら質問の意味を考えた。
私は今何を問われているのかわからない。
「…何が?」
「何故、ここに?」
「ああ。あなたに聞きたい事があったから。」
彼はきょとんとしてた。
不覚にも、その表情がちょっとかわいいなと思ってしまった。