3話
目の前の男は階級で言えば、私が話かけることのできない地位についている。
短慮はだめだと、3度自分の中で唱えた後私は口を開いた。
「失礼ですけど、ご自分のお立場を分かっておいでですか?貴方様はインブレンバート家のご長男でそのインブレンバート家は王のご親戚にあたる家柄。私はティンメルミア家の長女。ティンメルミア家は貴族の中でも下級。まず、家柄が違います。」
私はふぅっと息をついた。
自分の家が下級なんて、言っていてちょっと悲しくなったが言いたい事を全て要約して言えたような気がする。
「家柄が違うと、結婚できないのか?」
目の前の男はさらっと言った。
一瞬、のどがつまったように言葉がでなかったが、すぐに気を取り直して息を大きく吸った。
「あなた!何を今まで学んで成長してきたのよっ!」
ちょっと爽快感を感じたがそれは一瞬のことで、私はすぐに後悔した。
インブレンバート家はさっき自分で言ったように名門中の名門。
そして彼は第1武責任官である。
この国の武官は3武、3つの大きな隊に分けられる。
その3武にはそれぞれ少佐、中佐、大佐がいて、その上に責任官がいる。
そしてその上に武官全てをまとめる最高責任者、総統がいる。
ほとんど下っ端武官は少佐・中佐・大佐のそれぞれの隊に所属して、それぞれの直属の上司の命令に従う。
私は3武の中佐が直属の上司であるから、彼の指示に従って毎日仕事をしている。
私の上司である中佐の上司が大佐で、その大佐の上司が責任官。
簡単にいえばすごいえらい立場にある彼を、私は怒鳴りつけてしまった。
そして嫌なことを思い出す。確か今の総統はインブレンバート家の血筋の人。
私、武官でいられなくなるかもしれない。
自分が発した言葉に大きな後悔を感じていた私に、ルイリエンはゆっくり答えた。
「何だろうね。」
「………えっ?」
「だから、何を学んで成長してきたんだろうね。」
私に聞かれても。
そんなの、知らないって。
私はつっこみたくなった。
何だか、話がごちゃごちゃになってしまったけど早くこの人から離れたい。
関わりたくない。
ちょっと今さらな気もするが私の本能が、関わるとろくなことないぞってサインをだしているような気がする。
「と、とにかく!私はちゃんとお断りいたしました。ではっ。」
私は言いたい事だけ言うと、その場を全速力で走り後にした。