7 虫にさされました
すみません、またしても遅くなりました!!
食堂で仲良くなった、イーちゃん、ウーちゃん、エーちゃん達は、明日、仕事が終わった20時頃に私の部屋に集まる事になりました。
今日はさすがにバテバテですし、明日の朝早くに私のお店に必要な道具を取りに行く事になっているから夜更かしはできません。
王妃様に逢うのに、寝不足というHP不足は体に毒です。というか精神に毒です。
「では、エヴァ様おやすみなさいませ」
「ふぁい。おやすみなさい〜アーちゃん」
相手はふかふかのベッド。横になったら最後、夢の中へダイブです。
そりゃもう、ぐっすりでした。
そう。私、疲れてたんです。
だからです。
決して見たくて見た訳ではありません!あんな…あんなリアルな夢!!
いーやー!
恥ずかしすぎますー!
寝てる私の頬におでこに、そ、そしてく、くくく唇にキスをするディセル兄様の夢なんて!!
しかも、耳元で「永遠。」なんて…。なんて!
あれは絶対、絶対!ディセル兄が私の名前なんか呼ぶから!!だからあんな夢を…
うわ!思い出しちゃった!
朝から全身真っ赤にしてあたふたする私のところに、アーちゃんが、ニヤニヤしながら起こしにきました。
あぁ、もうそんな時間なんですね…
っていうか、なんですか。その嫌らしい目は。こっちは変な夢のせいで朝から疲れてるっていうのに…。
「おはようございます。エヴァ様。よく眠れまして?」
「ええ。まぁ。」
「あらあら?何やらお顔が真っ赤でしてよ?夜、なにかありまして?」
…。なんでそんなに楽しそうなんですか、アナタ。
「べ、べべべべ、別に何もナイですよ?ちょっと夢見が悪かっただけです。」
「ほう。夢見がねぇ…。ちなみに、どんな夢でしたの?」
「わ、忘れました!!なんだっていいじゃないですか!さ、早くお店に戻らなきゃ。支度しますね。」
「ふふ。ではお手伝いしますわね〜」
「え。大丈夫ですよ?自分の支度位一人でできます。」
「いいじゃないですか。さ、早くお脱ぎになって」
「わぁ!止めて下さい!!自分でやりますから!ぎゃっ!!脱がさないで〜!!」
でーたー!変態さーん!!
なんでこんな細い腕してるのにこんなに力強いんですか!!
やーめーてー!
「あら!あらあらあら!何かしら?この首のところの赤いアト!」
「へ?なんかあります?別に痒くないけど…虫にさされた?…。はっ!ま、まさか!」
「まさか!?」
「ストレスで蕁麻疹!?え?そんなに赤くなってます?ぶつぶつしてます?」
「…。イエ。一ヶ所だけ、ちょっとだけですわ。」
「本当?よかった!んじゃやっぱり虫さされかなぁ?」
「…。よーく分かりましたわ。案外殿下ってばヘタレでしたのね…。いえエヴァ様が鈍いだけ!?それにしても…」
アーちゃんが虫さされを気にしてぶつぶつ言っている間にと思い、急いで着替えちゃいました!
何を言っていたのかよくわからなかったけど、虫さされくらいすぐ直るから大丈夫なのにね…
気がついたらニヤニヤがなくなっていたので安心しました。
じゃっかん哀愁の漂うような目をされましたが、気のせいでしょうか。
「あら、もう着替えましたのね」
「はい!」
「あら残念。では朝食をお持ちしますね。」
食堂でいいのに…。
そして出された朝食は、ものすごくビックリな位の量でした。
すっごく勿体ないけど、残してしまいました…ああ、タッパにつめて持ち帰りたい…。
それにしても美味でした。今度キッチンの人に料理習おうかな…。
さて、今日の午後は王妃様とご対面です。
しっかり用意しなくちゃ!!
そうして、私とアーちゃんは私の店からアロマとハーブ、それからマッサージ用のオイルなどを持って城の部屋に戻ってきました。
あとは、これを医局に持っていって毒とか、害になるものはないかチェックをしてもらうのです。
調合は迷ったけど、してしまう事にしました。チェックしてから調合じゃ時間がかかってしまう。
王妃様がどんな状態か分からないから、今日はとりあえず『心を落ち着かせる』ハーブブレンドにしましょう。
私は、仕事を始めると周りが見えなくなるようで、いつの間にかアーちゃんがいなくなっていた事に気がつきませんでした。
…。代わりにディセル兄がこの部屋にいることにも気がつきませんでした。
「相変わらず、だな。エヴァ」
「ぎゃっ!?」
いきなり耳元で話しかけられると変な声が出ちゃうので、やめて頂きたい!!
「え!ディセル殿下!?いつの間に!?」
「やはり気付いてなかったか。お前周りが見えなくなりすぎる。気をつけろと何度も言っただろう?」
「そ、それは…。だって…ごめんなさい…」
「はぁ。エヴァ、お前無駄に魅力振り撒くなよ」
「は?」
「危なくてしょうがない。」
な、なななな!なにいってるのこの人は!!
どうでもいいけど、ディセル兄の腕に閉じ込められている今が一番危ないと思うのですが!!
「俺だけでいいだろ?」
「へ?」
何がですかーー!
大体魅力なんて振り撒いてないですし!
とりあえず離してー!
夢を思い出しちゃって顔が上げられません。
「レイから手に祝福を貰ったんだってな」
「祝福?」
「これだ。」
私の手をとり、そのまま唇に運んで…
いやあああああ!
また手にチュウされたぁ!
なになに、なんなのこの兄弟!!天然たらし兄弟なの!?心臓もたないから止めて頂きたいのですが!
「…。されたのだろう?」「さ、ささされましたけれども!」
こんなにエロくありませんでしたけど!
「ふ。」
ふ。じゃなああああい!
「エヴァ。」
「はい!」
「お前が俺のもとに現れた時から、お前は俺のものだろう?」
違います!!
けど、あまりに堂々と言うものだから口をパクパクしただけで声が出ませんでした。
「っふ。」
あ、笑った…。
いつものニヤリとした笑みじゃなくて、ちゃんとした?心からの笑み。
この顔は威力でかいです。誰だってイチコロです。本当に、アナタこそ魅力をやたらに振り撒くのやめて欲しいです。
「お前にだけだろう」
また読まれた!!
「まぁ、いい。そろそろ時間だ。…この印が消えないように、また夜な。」
……。
へ?
去り際にディセル兄が触れたのは首もと。
まさか…。
虫さされの犯人はアナタかぁあああ!
というか、まさか…。まさか昨日の夢は…夢じゃ…
夢じゃないのかああああ!
その後アーちゃんが迎えにくるまで悶絶し続けた私でした。
ディセル兄様やっと出せました。
次回も頑張ります!!