5 お姫様な部屋でした
すみません、遅くなりました。
読んで下さる皆様、ありがとうございます!!
お気に入り登録も少しずつ増えていて嬉しいです!!
なんとか、国賓扱いなどという怖いことは、避けることができました。
よかった。
あ、でも部屋は王族と同じ塔に用意されることになりました。
いつでも王妃様の元に駆けつけられるようにとの事。
もちろん、皇太子殿下の隣じゃないですよ!
それは、レイ君とアルシェイさんが保障してくれました。
なんとなく、ディセル兄は不満そうでしたが…きっと気のせいでしょう。
あの後、ディセル兄とアルシェイさんは公務があるからと席をたちました。
「永遠」
彼は確かに私をそう呼びました。
ずっと昔、私達が出会った時に呼んでくれていた名前。
「とわこ」という名前はなじみがないから「永遠」と呼んでいました。
もう、ずいぶんと呼ばれていない本当の名前に、胸の奥が騒いでいます。
あの人と一緒にいて、胸が騒がないことなんてなかったですけどね。
やっと、やっと一人でいる事になれたのにな…。
「エヴァ?大丈夫?」
はっと顔を上げると心配そうにこちらを見ていたレイ君に気付きました。
「あ、すみません。大丈夫です。」
「突然こんなこと頼んで、ごめんね?しかも俺が王子であることも黙ってここに連れて来てしまったし…驚いたよね。」
「それは…もちろん驚きましたよ。レイ君…いや、レイランド様の事も『お願
い』の事も。それから…皇太子殿下の事も…でも!引き受けたからには全身全霊やらせていただきます。
…心配しなくても大丈夫ですよ。私、結構突然のイレギュラーにはなれてるんです」
にっこりと笑うとレイ君は少し安心したように笑みを返してくれました。
「やっぱりエヴァと一緒にいると落ち着くなぁ…時々は俺も、エヴァのお世話になろうかな」
「ん?美容液ですか?それとも解毒薬?」
「違うって!…ねぇエヴァ。俺が王子って分かっても前と同じような態度でいてくれる?」
「それは…」
「今までみたいに、話したい。俺の事も聞いて欲しい。エヴァと一緒にいるとなぜか安心するんだ。だから…もし、俺が王子って事でエヴァとの間に溝ができるのは嫌なんだ。」
…こ、この子ってばなんて口説き文句を恥ずかしげも無く言えるのですか!!
天然たらしだ!絶対そうに違いない!
はあ。本当なら、よくないんだろうな。だって仮にも王子様です。
ただでさえ、王妃様のお側に付くことに急になった誰とも知れない新参者。更に王子様と親しいなんていったら嫉妬やらなにやら被害をこうむる事は必然です。
でも、レイ君の町での生き生きした表情とか、話を知っているから。
…断れませんよね?
「…さすがにレイ君とはここでは呼べませんから、レイ様とは呼ばせて頂きますよ?」
「エヴァ!」
「お話くらいは聞きますよ。前にも言ったけど、話を聞くことくらいしか私にはできませんけど。それで心休まるならいつでもたずねて来てください。」
「うん。ありがとうエヴァ」
ああ。キラキラ光線が…美人が笑うとそれはそれは、輝かしいですね!なんかもう慣れてきましたよ!
キラキラはこの城では当たり前!よし!
「それじゃ行こうか」
「は?どこへ?」
「この城のハーブ園。それから王族の住まう塔を案内して、エヴァに付く侍女を紹介するよ。その頃にはもう、エヴァの部屋の用意も終わっているだろうから、部屋まで案内するね!」
レイ君の言葉にぎょっとしました。
ど、どどどど、どういうこと!
「じ、侍女さま!私にですか!」
「侍女さまって…ふふ。エヴァは年上なのに、ときどき可愛いこというよね」
ぎゃ!また出た天然タラシ発言!
「そ、そんなことより、私に侍女さまなんていらないですよ!勿体ない!」
「いやいや、エヴァ一人じゃ絶対迷子になるしね?それに俺達とのつなぎのことを考えても、侍女がいたほうがいいんだ。ここでは」
…ここではって…いやそれにしても、絶対迷子になる発言は取り下げて貰えないかな…
地味にへこむんですけど…
「ほら、行こう。エヴァ。ハーブ園、嬉しいんでしょ?」
「…嬉しいです…。」
「よかった!じゃあ行こう!」
レイ君に手を引かれて部屋を出ました。
あれ?これって手を繋いでいる事にならない??
迷子にならないように、ね?とか可愛く首を傾げて言われたらもう何も言えません。言えるわけがありません!
というわけで、城の中を案内されている間中、王子様と手を繋いで歩くという怖い事をしでかしてしまいました。
ああ。これで何人の敵を作ったか考えると怖いです。ぶるるるる。
そうして連れてきてもらったハーブ園は、それはもう天国でした!
私、ここに小屋建てて住みたいかも…などと考えてしまいました。
ハーブだけでなく、色とりどりの花が咲く庭が広がっていて本当に素敵な場所でした!
ああ、幸せ…。
とりあえず近々、王妃様にお逢いしてお話を伺わなくては。
まずは気分が良くなるハーブティーでも用意しましょうか。あとはアロマで…いくつかサンプルを用意して好きな香りを選んでもらって…
「…?…ヴァ…エヴァ!?」「はっ!はい!?」
しまった!ちょっとトリップしてしまっていたようです。レイ君がまたしても心配そうな顔をしています。
「すみません…考え事してしまいました。」
「ううん。大丈夫。よっぽど嬉しかったんだね。すごく目がキラキラしてた。」
わぁ!いつもキラキラしている人に言われた!!
どんだけ顔や態度に出るんだろ…私ってば、もう。
そんなにわかりやすいかなぁ?
「散策は明日ね!エヴァがハーブ園に入ったら出てこなくなりそうだからね!」
わぁ、よくご存じで!!
名残惜しいけど、明日にはゆっくり散策できるものね!あぁ、わくわくする!
「はぃ、じゃあ部屋に向かおう。アリが待ってる」
「アリ様?」
「様はいらないよ。エヴァの侍女さま。アリアス・ウィングストン。きっとエヴァと気が合うと思うんだ」
「どぅいった方なのですか?」
「一言でいうなら『面白い』子かな?でも有能だから心配しないで。あ、アリアスに決めたのはディセル兄上なんだよ。エヴァにはアリアスがいいだろうって。エヴァが打ち解けやすいだろうって!!」
「そうですか…。なんだか『面白い』で気が合うっていうのは気になるとこですけど…期待しておきます」
なんというか、ディセル兄が選んだという時点で不安ですけど…
しかし。さすが、王族の住まうお屋敷。広すぎです…。
確かに迷うかもしれません。
いや、きっと迷う!
私部屋からハーブ園までたどり着けないかも…と思うほど複雑というか迷路のように歩きやっと到着した部屋。
…。
ここ?この部屋?
ど、どこのお姫様のお部屋デスか?!
ここで寝るの!?
いやいやいや、なにこのベッド。さらっさらだよ?こんな上等な生地の上に寝るの!?しかもいわゆるお姫様ベッド。
何人寝れるのっていう位キングサイズ。
ああ、もしもこのベッドが私の自宅にあったら、部屋が埋まるなぁ。なんて考えてしまいました。その前に入らないか。
こんなにいい部屋なんて…。いい部屋すぎて落ち着きません…。
「ちょっと狭くてごめんね。でもここが一番エヴァが行動しやすいと思うんだ」
狭い!これが狭いと!!
貴方どれだけ広い部屋に住んでるんですか!!って叫びたくなりましたが、堪えました。
私は、大人。落ち着け、落ち着くのよ。
確かに場所は、一番出口に近い部屋で動きやすい。
王族の方々の侍女さんや執事さんたちと近い部屋だし。
なんだか厚待遇過ぎて怖いですけど、文句を言うわけにはいかないので、我慢します。
つくづく私ってば平凡平均な一般人なのですね。
狭いところが落ち着くなんて…。
まぁ、なれれば落ち着くハズ…。ハズ!!
頑張ってなれましょう!!
むん!と気合いを入れたところで「コンコン」と戸を叩く音がしました。
ついに侍女さまと対面ですね!
「は、はい!どうぞ!」
「失礼いたします。」
そう言って入ってきたのはメイド服をきっちりと着こんだ落ち着いた雰囲気の女性だった。
わぁ、優しそう。よかった!
「エヴァ、こちらがアリアス・ウィングストンだよ。」
「は、はじめまして。エヴァ・トゥルーツリーと申します。あの、よろしくお願いいたしま…」
「きゃあああああああ!」
…え?
挨拶がかき消されるほど大きな叫び、いや悲鳴?が鳴り響いた。と、思った瞬間突撃されました。
あ、あれ??
「いやぁん!なになに?可愛いですわ!」
「ぐ、ぐふっ」
「背は小さいけど、さわり心地は良好!すぽっと抱き抱えるに最高のサイズですわ!なるほど。皇太子殿下の言う通りですわね!ううん、素敵!!あら!肌もつるつる!」
「あ、あの…。ぐはっ」
ぎ、ギブギブ!ギブアップです!苦しい!!抱き締めすぎですぅ!
「…。はぁ。アリアス。放せ。エヴァが死にそうだ。」
「あ、あら失礼いたしました。」
はぁはぁはぁ!本気で圧迫死するかと思いました!!
なんとなく、一瞬お花畑が見えた気がします!!
「申し訳ありません。エヴァ様。余りの可愛さに、つい」
えへっと笑いましたが、私はまだ涙目です。ううう。
「申し遅れました。わたくしアリアス・ウィングストンと申します。本日よりエヴァ様のお手伝い&お世話をさせて頂きます。よろしくお願いいたしますね」
鮮やかに挨拶をする赤毛の美人さんはディセル兄と同類の変態さんでした…。
…。なんとなく不安になったのは私だけでしょうか。
新キャラ登場です。
これからどんどんキャラが増える…かもしれません。
これからも頑張ります!