12 お役ごめんでしょうか?
すみません!!大変遅くなりました!!
恐怖の連続勤務がやっと一段落…。
注文が殺到してから、数日。
できるだけのことはしているけど、やっぱり一人では作れる量は限られています。
誰かに手伝ってもらうにも、城の薬師様たちはやっぱり頼りにくいですし…知り合いも忙しい侍女さまたちだけだし。
うーん。でもこのままじゃ、今ある注文だけでも2ヶ月はかかってしまう。
どうしたものかと悩んでいるのが、顔にばっちり出てしまっているようで…
「あら…エヴァさん。どうなさったの?浮かない顔をしているわ」
メルエス王妃が心配そうにこちらを見ていました。
ああ、心配をかけてしまいました。
「すみません!大丈夫です。ちょっと睡眠不足で…それよりも、メルエス様こそ調子はどうですか?」
「わたくしは、大丈夫ですわ。ほら、もう大分動けるようになったでしょう?」
うふふ。と朗らかに笑うメルエス王妃は本当に綺麗です。
そう、王妃様はかなり改善されました。
顔色も良くなったし、食事も王様と一緒にとるようになり、艶やかになりました。
「わたくし、そろそろ体力も戻ってきましたし、やりたいことをやろうかと思っていますの。」
「やりたいこと?」
「ええ。」
「いいですね!本当に元気になられたようでよかったです!」
「ありがとう。エヴァさんのおかげだわ」
「いえいえ。私は何もしていません。王妃様が…メルエス様がご自分で乗り越えられたのです」
あれ?でも、メルエス様が元気になったと言うことは、もしかして私お役ごめんでしょうか?
あれから、ディセル殿下にも逢っていない…。
「それでね。センド王とも話していたのですが……エヴァさん?」
「へ?」
「…やはり元気がないわ。どうかしたのですか?」
「あ、も、申し訳ありません。あの、その…」
じっと見つめてくるメルエス様。
私の手を取り、ぎゅっと握ってくれています。
ああ、私が落ち着くのを待っていてくれているんだなと解る。
…ディセル殿下もそうだから。
「…あの…メルエス様。元気になられたから、そろそろ私はお暇しなくては…と…」
「「いけません!」」
…へ?…
ビックリして顔を上げると、真っ青な顔をして私の手を握るメルエス様と、いつの間にか近くに寄ってきていたアーちゃんたち侍女様ズが真っ赤な顔をして私を取り囲んでいました。
…えええ?何時の間に?っていうか、ええええ?
メルエス様が、私の手を強く握りました。
「いけません。エヴァさん。どうしてそんな悲しい事をいうのですか。」
ええええ?
「わたくしは、エヴァさんと一緒に居たいのです。ですからセンド王とも話し合って、エヴァさんを正式にワタクシの薬師として城に招きたいと思っていましたのに…」
「そうですわ!エヴァ様!まだまだこれからですのに!お店ならこの城でもできますわ!今だって、こちらでお仕事なさっていますし!」
「で、でも…いつまでもお世話になるわけには…」
王妃様の為に一時的にこちらにお世話になっていたわけで…いつかは帰らなくては…
…ん?今、メルエス様なんて?
「ですから!一時的ではなくて、ずっとここに居て欲しいのです。私の薬師として、友人としてこちらに居てはくれませんか?」
…驚きました。友人として…まさか、そんな風に言ってもらえるとは思いませんでした。
…でも…嬉しいですが…どうしたらいいのか、正直わかりません。
黙っていると、メルエス様が優しく抱きしめてくださいました。
「…いきなりごめんなさいね。驚いたでしょう?もちろん無理強いはしません。ゆっくり考えて欲しいのです。ね?」
「はい…」
頭が混乱して、頷くことしかできませんでした。
「…ところでエヴァさん。エヴァさんの化粧水が大好評のようね。」
「ええ?なぜそれを?」
「ふふ。あの子達が、教えてくれたのです。実はわたくしも使っているのです
よ?」
「えええ?」
お、王妃様御用達ですか!そりゃ、人気もでますよね!
…注文が増えている理由がここにも…
「ですが、それでエヴァさん寝不足なのでしょう?せっかくわたくし元気になって、エヴァさんと一緒にドレスを作ったり、歴史を教えたりしたいのに…」
え…もしかして、やりたいことって…それですか?
「だからね?エヴァさん。エヴァさんに侍女以外に仕事を手伝える人をつけたいと思うのですが、いいかしら?」
「ひぇ?」
「もちろん、エヴァさん考案のレシピを教えてもいいのであれば…の話なのだけど。」
「え…いえ、あの。そこまでしてもらうわけには…」
「いいのです。わたくしがエヴァさんと一緒にいたいというワガママを言っているのですもの」
そう言って、にっこり笑ったメルエス様は似ていないのに、なぜかディセル兄と重なりました。
しかし…。
手伝ってくれる人がいるのは、かなり嬉しいです。
「あの、できればお願いしたいです。ちょっと、厳しいなと思っていたところなので」
「ええ、ええ。よかったわ!では早速お願いしておきますね!」
そう言ったメルエス様は本当に嬉しそうでした。
本当にお元気になられたんだなぁ…。
王妃様との面会も終わり、とりあえず今日は休む事になりました。
何故だか侍女様ズにも、休め、寝ろと部屋に押し込まれました。
…。そんなに酷い顔をしていたんでしょうか…。
ちょっとショック。
ベッドに横になると、なんだか、今日は色々あったなぁ。と力が抜けます。
でも、なかなか寝付けません。体は疲れているはずなのに…
…あの日から、ディセル兄に逢っていないなぁ…。
忙しくなるから、逢いにこれなくなるとは言っていました。
だって、皇太子ですもんね。そりゃ忙しいですよ。
…大丈夫かな。ちゃんと寝てるかな。ご飯もちゃんと食べてるかな…
出会った頃のディセル兄は、ご飯も食べずに研究に没頭することが多かったのです。
私も一緒になって、没頭して。でも、私の腹時計は正確だったので、お腹がなるとディセル兄は笑って『ご飯にしよう』って言って一緒に食べて…
…会いたいなぁ…
ううん。会いたくない。会ってしまうのが怖い。
あの夜、キスされて。
昔の恋心を思い出してしまった。
…恋をしてはいけない人なのに…
ふと溜息を吐いたとき、妙な光が部屋を照らしました。
え?と思い振り向いた時、見えたのは部屋にある大きな鏡。
…鏡が光ってる?
というか、こんな鏡あったっけ?
恐る恐る近づいていくと、その鏡から甘い声が聞こえてきました。
そう。あの人の、声でした。
思うように進んでくれませんでした…。あれぇ?
なんで、なるべく早く次回は更新したいなぁ…なんて思ってます…(^^;)))
いつも読んで頂きありがとうございます!!




