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裏・空白の国・ディセル目線4

あと一話続きます!


エヴァが母上の為に、ハーブを調合し始めた。


そうアリアスから連絡が入り、俺は執務室から出ようとした。


「またエヴァさんのところですか?兄上」


と、ドアのところにアルシェイがいた。

…まったく気がつかなかった。

相変わらず化け物のような奴だな…


「…アル。お前、なんで気配どころか存在を消すようにここに来る?」


アルは「ああ!」と今気付いたという顔をして『アル』という存在を表した。


「訓練終わったっていうのに、騎士見習い達に囲まれて『従者にしてください』とか『尊敬してます!』とか色々言ってくるからメンドクサクなって、気配消して逃げてきたんだった。忘れてました。すみませんね。兄上」


…。

相変わらず汗臭い男どもに好かれているようだ…。 

「…お前も大変だな…」

「はは。まあ、レイや兄上よりはマシですよ。レイは男女ともにキャッキャ騒がれますし、兄上は老若男女ファンがいますからね。まあ、兄上には近寄りませんけど。」

「…知らん。」

「そういって、放置してるのは?」

「…あいつらも役にはたつからな…」


主に情報操作面で。


「…はは!相変わらずですね。で?今からエヴァさんの所に行くんですよね?」

「ああ。」

「今日、母上に会うんですね。気に入ってもらえるといいですね。その為にエヴァさん呼んだんでしょ?」

「まあな。だがそれだけじゃなく、ちゃんと母上の為にでもある」

「…本当に母上の体調を治せると?」

「まあ、確証はないさ。」

「とか言って、すごく自信に満ち溢れている顔されてますけど。はあ。本当びっくりしましたよ。兄上のあんなに甘えた姿なんて初めてですからね。しかも、俺達兄弟にも全然隠さないし」

「当たり前だろう。アレは俺のだ。よくわかっただろう?」

「…まあ、解りましたよ?逆に興味ありますけど。兄上がそこまで執着する女性がどんな人なのか。お手並み拝見ってところですかね」

「…アレのことだけは、俺も読めんからな。期待はするな」

「どうでしょうね。で、エヴァさんによろしく伝えてください。今度俺も逢いに行きますって」

「…言うか。ばかもの」


しまったな。

恩人と慕うレイランドだけでなく、アルシェイにも興味持たせてしまった。

まあ、アルの場合『俺が執着する女性』に興味があるだけだ。

さて。思わぬ足止めを食らったが、エヴァに逢いに行くか。


エヴァの部屋につくと、アリアスがにやにやしたまま出迎えた。

っち。ばれていたか。


「お待ちしておりましたわ。殿下。」

「…。今日は覗くなよ。」

「うふふ。もちろんですわ。殿下。邪魔はいたしませんわ。でも…殿下。頑張らないと、気付いてももらえませんわよ?」

「…解ってるさ。」

「うふふふ。なんて言っても、首のア・レ!『虫さされ』ですものね。うふふふふ。さ、頑張っていらして!殿下!」


…。

虫さされ…。

そうきたか。

エヴァ…。


部屋に入ると、調合に熱中するエヴァの姿が目に飛び込んできた。

まったく、こちらに気がつかない。

…懐かしいな。

相変わらずの後ろ姿だ。

俺はそっと、エヴァに近づいた。



「相変わらず、だな。エヴァ」

「ぎゃっ!?」


…相変わらず色気のない言葉が飛び出るな。

目を真ん丸くしてこちらを見るエヴァは、昨夜のように頬をピンクに染めていた。


「え!ディセル殿下!?いつの間に!?」

「やはり気付いてなかったか。お前周りが見えなくなりすぎる。気をつけろと何度も言っただろう?」

「そ、それは…。だって…ごめんなさい…」


しゅんと小さくなる。

ああ。可愛い。

可愛いが、お前それ誰にでも振りまくだろう。

いい加減自覚してもらわないと、困るんだがな…。


「はぁ。エヴァ、お前無駄に魅力振り撒くなよ」

「は?」

「危なくてしょうがない。」


そう言って、俺の腕の中に抱きこんだ。

すっぽりと抱き込まれたエヴァは固まったまま、真っ赤になっていた。


「俺だけでいいだろ?」「へ?」


お前の魅力を知っているのは、俺だけでいいだろう?

たとえ兄弟だろうと、侍女だろうとエヴァの魅力を知ってお前をとられたくない。


ふと、プルプルと震える手が目にはいった。

…そういえば。


「レイから手に祝福を貰ったんだってな」

「祝福?」

「これだ。」


俺はそのままその手を掴み、口元に運んだ。

ちゅっと、わざと音を立てて。


「…。されたのだろう?」

「さ、ささされましたけれども!」

更に赤くなり、震えている。

「ふ。」


コレ、どこまで赤くなるんだろうな。

真っ白な肌が、薄紅色に染まっていて、とても綺麗だ。

まるで小動物のように震える姿も、またいい。


「エヴァ。」

「はい!」

「お前が俺のもとに現れた時から、お前は俺のものだろう?」


あ。完全に固まった。

しかも口がぱくぱくしている。

…なんだコレ。

「っふ。」


あまりに無防備な姿に、つい笑ってしまった。

なんなんだ。この可愛さは。

今度は口を開けたまま呆けている。


かと思えば、きゅっと口を結んで赤い顔のまま睨んでくる。

どうせ、アナタこそ魅力をやたらに振り撒くのやめろとでも思っているのだろう。


昔も、言っていたな。

その笑顔は誰だってイチコロだとかなんとか。


「お前にだけだろう」


エヴァの目がまた、ぎょっとしたように大きくなった。

何度も言っているんだが、なぜ信じないのだろうな。



「まぁ、いい。そろそろ時間だ。…この印が消えないように、また夜な。」



去り際に首もとにふれ、俺は部屋を後にした。

これで、気付いただろう?


コレは『虫さされ』なんかじゃない。


俺の所有の『印』だと。



待っていてくれる皆様!ありがとうございます!!



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