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第3話:初めての手紙

母親の人柄……よかったのかはわからないけど、沢山、母親の友人だという人が葬儀に参列してくれた。

けど、父親の方にしても、母親の方にしても、親戚は来ていない。

あっという間に、母親の葬儀は終わった。

小さな葬儀ではあったものの、それなりに忙しかった。

翌日、だいぶ落ち着いてあたしもそろそろ家を出ようかなと思っていた頃。

1通の封筒が届いた。

宛先のところにはあたしたち家族の名前(母親の名前は除く)がそれぞれ書かれていた。

差出人を確認する。

………………

亡くなったはずの母親からだ。

あたしは急いで父親の元に向かった。

葬儀の疲れからか、父親の機嫌は最悪。

正直、話したくなかった。

けど“母親からの手紙”をそのままにしておくわけにはいかない。

 

「ねぇ。」

 

あたしが話しかけると、寝そべっている父親はかったるそうに答えた。

 

「ぁあ?何だ。金ならいつものとこだぞ。」

 

何で父親は“お金”のことを一番に思うんだ。

まぁ、確かにあたしも、口を開けば“お金”のことだったけど………。

 

「違う(怒)手紙、来たから。」

 

だるそうに起き上がる父親に、あたしは封筒を投げ渡す。

それを見た父親は、急に顔色を変えた。

 

「……これは今日届いたのか?」

 

いつもと違う声色。

初めて見る、仕事以外で真剣な父親の姿。

だけどあたしは、あまり気にせず、軽くながした。

 

「そうだよ。さっき。」

 

父親はますます真剣な顔つきになった。

“ピリ”と封を切り、中の手紙を読み始める。

約一分後、父親は静かな声で言った。

 

「…愛を呼んできなさい。」

 

「はぁ?なんであたしが。」

 

当然あたしは反抗する。

父親はあたしを“ギロ”と、睨んだが、あたしはその場を動かなかった。

(昔からこんな感じだったな)

なんて呑気なことを思いながら。

 

「…早く行きなさい。」

 

再び父親は言った。

が、またもあたしは否定する。

 

「嫌。」

 

これにはちょっとした理由がある。

父親は、苛立ったみたいで、大声をあげた。

(…癇癪もち)

 

「いい加減にしろ!早く行きなさい!!」

 

「何で?自分で行けばいいじゃん。」

 

物怖じせずに答えたあたしに父親は口籠った。

わかってるよ。

自分が行きたくないことくらい。

だって愛は今、多分勉強中。あいつ、勉強してるときは集中してるから、邪魔入るとかなり機嫌悪いしね。

とか思ってると、タイミングよく(?)愛が下りてきた。

 

「ねぇ、さっきからうるさいんだけど。勉強の邪魔。」

 

髪を二つにくくり、メガネをかけていかにも“真面目”オーラ漂う姉の姿。

 

「あ……あぁ、ちょうど良いところに来た。」

 

父親は軽くせきばらいをしてから言う。

 

「実はな、幸から手紙が来たんだ。」

 

昔っからそうなんだけど、父親は愛には甘い。

実際、愛は家族のなかでもある意味一番恐いから。

(……臆病者)

 

「はぁ?母さんからの手紙?そんなのあるわけないじゃない。」

 

バカらしい。というように手を振り、愛は自分の部屋に戻ろうとする。

 

「これがその手紙だ。さっき届いた。」

 

そんな愛に父親は封筒をさしだした。

差出人の名前を見て愛の表情が一瞬固まる。

 

「……う…そ。」

 

愛はそのまま中の手紙も読んだ。

 

「何…コレ…“明日の昼下記の地図に示された場所に来い”」

 

愛はそれだけ言って口を止めた。

そしてまたバカらしい。と言うように、手紙を放った。

 

「こんなの、無視しとけばいいよ。どうせ何かの悪戯でしょ。私、今週末模試があるの。二度とこんなくだらないことで騒がないで。」

 

微かに怒り気味の声で言うと、早々と自分の部屋へ戻っていった。

……まぁ、愛の言うことも最もだな。

こんなの、確かに悪戯だろう。

間に受けたあたしがバカだった。

 

「じゃ、あたしももぅ行くから。」

 

その手紙をまだ真剣な表情で見ている父親に、あたしは言ってから、家を出た。

しばらくは愛とも父親とも、顔を会わせたくないな。

と思いながら………。

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