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第1話:母の亡くなった日
タータタラタ タラタタター 軽快なリズムの音楽。
“手のひらを太陽に”は家族からの着信音。
あたしは、うざったそうにケータイに出た。
「なに?」
受話器越しに聞こえた父の言葉は、明るく、“生きる”をテーマにしている着メロとは全くの正反対の内容。
「幸(サチ=母)が亡くなったから、帰ってきなさい。」
なに?それ。
何かの冗談?
でも、何にしても、こう言われて、帰らないわけにはいかない。
とりあえず、自分の荷物を持つ。
「ちょっと帰るわ。」
その場にいる友達に、理由も告げず、それだけ言った。
「おぅ。じゃまた。」
友達もまた、理由を聞くことはしない。
ただ軽く返事だけ返してくれた。
家までの足取りはものすごく重い。
おまけに心持ちも………。