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演目9 放課後の遊び


「ねぇ、この後暇?」

「もし良かったら、あーしらと一緒に買い物でもしない?」


 模擬戦終了後、魔法少女衣装から制服へと戻った俺はギャルっぽい女子二人に声を掛けられていた。

 一人は茶髪のハーフアップ、もう一人は金髪サイドテールだ。


 この二人、誰だっけ?


「えっと……」

「あっ、そう言えば自己紹介してなかったね。私は才川幸さいかわさち

「あーしは鷹野遥たかのはるか。あーしらクラスメイトだよ」


 茶髪がサチ、金髪がハルカね。


「知ってると思うけど、皇ネロだ。よろしく」

「よろしく」

「よろしくー。じゃあ行こっか」

「ああ。その前にちょっと……」


 移動を始めようとした二人を止め、俺は自分の髪の中に手を突っ込んでこっそりと教室に置いて来た学生鞄を手元に取り寄せた。


「よし。行こう」

「……今のって」

「手品? 魔法?」

「さぁ、どっちだろうな?」


 驚いた二人を追い抜いて歩き出すと、二人は遅れて隣を歩き始めた。


「ねぇネロっち、さっきの戦いだけどさー、あんなに技っぽいのぽんぽん思いつくものなの?」

「想像力はある方だから、こんな感じに」


 ハルカの言葉を証明するように、スッとナイフを取り出し、手をかざして一瞬で消して見せた。


「わぁ、手品か魔法か分かんないや」


 魔法です。言ったら面白くないから言わないけど。


「それでネロ、休憩時間の時に誰かが質問して逃げたけど、元は男か女どっち?」

「……言ったらどうなる?」

「それはねー……」

「勿論、元男だったらあーしらの玩具になるっしょ♪」


 ですよねー。


「なら言わない」

「それ、実質元男だって言ってない?」

「そーそー。元々女子だったら間髪入れずに堂々と女子って言うもん」


 うっ、流石は進学校の女子高生。賢い。


「だが、秘密主義という可能性もある」

「そうだけど、口調や声のトーンで男っぽいよ」

「だね」

「……」


 駄目だ、誤魔化せない。


「分かった答えよう。元男だ」

「やっぱり。じゃあハルカ、私らで女子の遊びを教えるよ」

「おけおけ。一度元男の魔法少女と遊んでみたかったんだ♪」


 ギャル二人の止めどない世間話を間に挟まれつつ聞き、時折話を振られながら到着したのは近くのショッピングモール。


「ネロっち、この街に引っ越して来たばっかりだっけ?」

「ああ」

「じゃあここ覚えておくといいよ。大体の物揃ってるし」

「まずはなんか食べよっか」

「さんせーい」


 二人に手を繋がれ、俺は引っ張られるままに中に入った。

 ショッピングモールだけあって中は様々な店が並び、買い物客で賑わっている。制服を着た学生たちが目立ち、近くの学校の生徒が遊びや買い物に集まっているようであった。

 クレープ屋でクレープを買って食べ、服屋で着せ替え人形にされ、化粧がどうこう説明され、ゲームセンターでちょっと遊んだ。

 帰宅するのによい時間となり、三人並んで外へと向かう。


「今日は楽しかったよ。ありがとうネロ」

「ありがとねー」

「ん、それなら良かった」


 俺はちょっと疲れたけどな。

 活力ある現役女子高生の相手は、おじさんにはちとキツイ。

 特に着せ替え人形は羞恥心に煽られてメンタルにきた。


「あっ、そうだネロ。連絡先交換しよ」

「ん、ああ」


 ハルカの提案により、スマホを取り出して連絡先を交換した。電話番号と『トコトーク』というトークアプリだ。


 ――っ! この気配は……!?


 連絡先の交換を終えて歩き始めた直後、背中からナイトメアに似た気配を感じた。

 振り返ると、そこには漆黒のフード付きロングコートを纏った人が立っていた。胸の膨らみや体型からして女で、フードを目深く被っていて顔が見えない。

 季節外れの奇抜な格好をしているにも関わらず、誰も彼女を認識していないようだった。


「始めるよ、新人さん♪」


 彼女は口元を笑みにしつつ俺に向かって言い終わると、幻であったかのように消えた。

 直後、少し離れた位置からナイトメアの気配が急に発生し、周囲を呑み込むように瞬時に黒い膜が広がった。まるでホラーゲームのようなどんよりした薄暗い世界へと変わり、息が詰まるような圧を感じる。


「何だ!?」

「えっ、これって!」

「『夢境むきょう』だよ!」


 俺が驚くと同時、サチとハルカも驚いて辺りをキョロキョロと見渡した。周辺では俺たちと同じように驚いている人たちが大勢いる。


 これが夢境……田舎じゃ発生しないから初めてだ!


 夢境とはナイトメアの結界だ。

 通常はナイトメアが一体だけ出現する筈が、様々な負の感情が混ざり合った状態で溜まりに溜まることで発生する。その中ではナイトメアが複数同時に出現し、通常より強くなるらしい。

 しかも、結界は魔法少女でないと穴を開けることが出来ず、電波やテレパシーの類も遮断し、普通の人間は脱出不可能だ。


「サっちゃん、離れないようにね」

「うん。ネロ、これからどうするの?」


 どうする?

 先に二人だけでもこの夢境から出すか?

 でも結界に穴を開けた経験なんて無いし、出来るかどうか分からない。

 それに今ここで下手に動けば、残された大勢の人が危険に晒される。

 ……結界……それしかないか。


 変身して魔法少女衣装を纏うと同時、俺は少しでも二人の恐怖を和らげる目的で少しキザな演出をしてみた。

 紙吹雪を舞い散らせ、足元には造花を生やす。最後にハットを被ってステッキを持ち、ポーズを取る。


「下手に動くのは得策ではない。とするなら……店の一つに結界を張って避難所にしよう」


 丁度傍にあったダブルドナルドというハンバーガーチェーン店にステッキを向ける。


「うん、分かった!」

「ネロも気を付けてね」


 二人は素直に言うことを聞いてすぐさま店に入り、俺は店を効果範囲としてイメージした。


「パントマイムの壁」


 魔法で初めての結界を生成。一瞬光の壁が出来たかと思うとすぐに見えない壁へと変化した。

 手を出して結界に触れようとすれば、手は結界をすり抜ける。

 だが、サチとハルカが手を出すと結界がそれを阻んだ。


「一応、条件付けして人間なら入れるようにはしておいた。私はナイトメアと戦うから、逃げている人がいたら声を掛けてやってくれ」

「任せて」

「頑張ってね!」

「ん、行ってくる」


 二人に見送られ、俺はナイトメアの強い気配のする場所へと向かった。

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