06 幸せは小さな事からコツコツと
※GeminiProに書いてもらいました。
第6話:鋼鉄の乙女と、コンビニの憂鬱
神に見守られし街の夜。
街灯が等間隔に歩道を照らす中、奇妙な三人組が歩いていた。
「あー、かったる。
なんで私がこんな夜更けに徘徊しなきゃなんないのよ」
白鳥ゆかなは、心の中で盛大に悪態をついていた。
だが、表向きは清楚そのもの。
可憐な白いワンピースの裾を少しだけ摘み、潤んだ瞳で夜空を見上げる。
「……夜の闇は、人々の不安を呼びますわ。
私たちが光となって照らさなくては」
「さすがゆかな!
今日も正義感マックスだね!
あたしなんて、お腹空いたことしか考えてなかったし!」
隣でガハハと笑うのは、色黒で活発な少女、黒島ゆみだ。
彼女の無邪気(というより単純)な笑顔は、
ある意味で裏表がない正義の現れと言えなくもない。
そして、二人の後ろを、重厚かつ静かな足取りでついてくる影が一つ。
暗い青紫色の装甲に身を包んだアンドロイド、シャイジャス3号だ。
「……ゆかなさん、ゆみさん。
前方300メートルに、幸福指数の急激な低下を検知しました」
3号の無機質だがどこか健気な声が響く。
「幸福指数の低下? どういうこと?」
「恐怖、焦燥、そして後悔の感情波です。
場所は……コンビニエンスストア『神光マート』です」
ゆかなの眉がピクリと動く。
(チッ、事件かよ。さっさと片付けて帰って半身浴したいんだけど)
しかし、彼女は即座に表情を「憂い」と「決意」の黄金比へと切り替えた。
「大変……!
誰かが泣いているのね。
行きましょう、ゆみちゃん、3号!」
「おう! 任せとけって!」
◇
コンビニの自動ドアの向こうでは、
包丁を持った男がレジの店員を怒鳴りつけていた。
「金だ! 早く出せ! 人生どうにでもなれってんだよ!」
典型的な自暴自棄型の強盗だ。
店員は腰を抜かして震えている。
そこへ、自動ドアがウィーンと開く。
「待ちなさい!」
「とぉっ!」
現れたのは、変身を遂げたシャイニングジャスティスの二人だった。
白を基調としたフリル多めのドレスアーマーに身を包んだ1号は、
両手で頬を隠しつつ、指の隙間から鋭い視線を送る。
「……こんな姿、殿方に見せるのは恥ずかしいけれど……
貴方の非道な行いは、もっと恥ずかしいことですわ!」
黒のスポーティな軽装鎧をまとった2号は、
仁王立ちしてから慌てて内股になった。
「そ、そうよ!
か弱い乙女に武器を向けさせるなんて、男の風上にも置けないんだからねっ!」
強盗は逆上して包丁を振り回した。
「うるせぇ! コスプレ女が! 邪魔するなら刺すぞ!」
強盗が1号に向かって踏み込んだ、その時だ。
「……暴力は、推奨されません」
1号と2号の前に、滑るようにして3号が割り込んだ。
彼女は変身という概念がない。
常にメタルボディだ。
その青紫の装甲が、店内の蛍光灯を鈍く反射する。
「どけぇ、鉄くず!」
強盗は止まらない。
切っ先が3号の腹部めがけて突き出される。
1号が(あっ、ヤバ)と一瞬本気で焦り、
2号が「3号ちゃん!」と叫ぶ。
――ガキンッ!!
硬質な音が店内に響き渡った。
包丁の刃は3号のボディに触れた瞬間、悲鳴のような音を立てて弾かれた。
3号のボディには、傷一つついていない。
まるで、小石が城壁に当たったかのような無力さだった。
「ひっ……!?」
強盗の手から、衝撃で包丁がこぼれ落ちる。
3号は一歩も引かず、攻撃されたことなど意に介していない様子で、
ただ静かに強盗を見つめた。そのカメラアイが優しく点滅する。
「……アナタの心拍数、発汗量、瞳孔の動き。
すべてが『助けてほしい』と言っています」
「な、なんだよお前……化け物か……」
「いいえ、私は正義を行うための機械。
でも、今はただのアナタの話し相手です」
3号はゆっくりと手を差し出した。
攻撃の構えではない。
握手のような、あるいは何かを受け取るような仕草。
そこには、人間のような打算も、恐怖も、そして軽蔑もなかった。
ただ純粋な「善意」だけがあった。
「お金を奪っても、幸福指数は上がりません。
アナタが本当に欲しいのは、金銭ではなく、安らぎではないですか?」
「う、うるさい……俺は、もう終わりなんだ……」
「終わりではありません。
私がここで、アナタの罪を受け止めました。
私の体は頑丈です。
アナタの絶望も、刃物も、すべて受け止めても傷つきません」
3号は小首をかしげた。
それはプログラムされた動作かもしれないが、
奇妙なほどに人間臭い「恥じらい」を含んでいた。
「……だから、そんな物騒なものを私に向けないでください。
私、これでも女の子の端くれですので……少し、怖いです」
傷一つない無敵のボディで「怖い」と言う矛盾。
けれど、その言葉は強盗の心に最も深く突き刺さった。
「う……うぅ……」
男はその場に泣き崩れた。 「ごめんなさい……ごめんなさい……」
◇
数分後。
駆けつけたパトカーに男は素直に乗せられていった。
去り際、彼は3号に向かって深々と頭を下げた。
夜空から、キラキラとした光の粒子が降り注ぐ。
「やるじゃん3号!
あの頑丈さ、あたしも欲しいかも!」
2号がバンバンと3号の背中を叩く。
「ありがとうございます、2号さん。
でも、少し塗装が心配です」
「ふふ、お手柄ね。
……ま、今回だけは譲ってあげるわ」
エンジェルスライムのエンジェラが、空からぷるぷると降りてくる。
『3号ちゃん、素敵でした~!
無敵のボディで恥じらう姿、萌えの恩寵を感じました!』
「幸福指数、上昇を確認」
3号は夜空を見上げた。
そのメタルボディのどこかで、回路が暖かく発熱するのを彼女は感じていた。




