26 消費税とベーシックインカム
※GeminiProに書いてもらいました。
第26話:桜と恥じらいとベーシックインカム
「よし、こんなもんか。
『要求! ベーシックインカム月3万円!』……と」
青神遊は、
ガレージの床に広げた巨大な布に筆で文字を書き終えると、
満足げに息を吐いた。
遊びと恥じらいと正義の神の子、
あるいはその受肉先とも目される18歳の彼は、
真剣な顔でのぼり旗を組み立てている。
「遊さん、それは……
いったい何に使うのですか?」
純白のワンピースに身を包んだ白鳥ゆかなが、小首を傾げて尋ねた。
色白の肌にほんのりと赤みが差したその仕草は、まさに『上品な恥じらい』。
彼女の周囲には、神の恩寵である淡い光のオーラがキラキラと舞っている。
(……月に3万。一年で36万。それが不労所得で入ってくるなら、
この恥ずかしい旗を持つくらいの労働、安いものね……!)
そんな腹黒い計算が頭の中で高速回転しているとは、
誰も――おそらく神でさえ――気づかないだろう。
「ん?
ああ。スウェーデンのストックホルムじゃ、
都市開発ゲームで識者がテストプレイして、
リアルな都市計画の改善に役立てたらしいんだ。
でも、日本の政治家どもはゲームどころか現実すら見えてないからな」
遊は筆を洗いながら、呆れたように肩をすくめた。
「最近も『食料品だけ消費税をゼロにする』なんて耳障りのいい
計画をアピールしてる連中がいるだろ?
でも、あれは完全に悪手だ」
「えっ、でも食べ物が安くなるのは正義じゃないのか!?」
黒のパーカーを着こなす色黒の黒島ゆみが、目を丸くして身を乗り出す。
「そこが罠なんだよ、ゆみ。
食料品だけ消費税ゼロにしても、その食料品を作るまでにかかった
肥料代やら輸送費やらの消費税は、しっかり取られてる。
結局、そのコストは食料品の本体価格にこっそり上乗せされるから、
消費者にとっては大して意味がないんだよ。
専門家がそう指摘してるのに、日本を壊そうとしてる政治家は、
やってる感だけ出すために強行しようとしてるのさ」
遊の的確な解説に、部屋の隅に控えていた暗い青紫のメタルボディ――
シャイニングジャスティス3号が、静かに電子音を鳴らした。
「マスター・遊の論理的推論を支持します。
無意味な政策による経済的停滞は、
人々の『幸せ』の数値を著しく低下させます。
……ああ、健気に生きる人々が苦しむなんて、
私のシステムが悲鳴を上げています……っ」
アンドロイドである彼女は、胸のコアを両手でギュッと押さえ、
恥じらいと悲哀の入り混じった見事な正義のモーションを披露した。
「だからさ、そんなややこしい事は置いといてだ」
遊は完成したのぼり旗をバサッと広げた。
「造幣局なら通貨を発行できるらしいからな。
ごちゃごちゃ言わずに、国民全員にベーシックインカムとして
月に2〜3万くらい配り始めりゃいいんだ。
というわけで、この要望告知のためのぼりを持って、
造幣局の桜でも見に行くぞ!」
「ぷいっ! ちょっと待つぷい!」
神の使いであるエンジェルスライムのエンジェラが、
ぽよんと遊の頭の上に乗っかった。
「お金を要求するなんて、はしたないぷい!
神様のチカラを借りるなら、もっと『恥じらい』と
『正義感』を出さないとダメぷい!」
「エンジェラの言う通りですわ。
お金を要求するだなんて……
私、恥ずかしくてお嫁に行けません……っ!
でも、困っている人々を救うためなら……!」
ゆかなが両手で顔を覆いながら指の隙間からチラリと前を見ると、
彼女の腰に光り輝く変身ベルトが出現した。
「シャイニングジャスティス、1号……っ!」
「アタシも!
悪い政治家をぶっ飛ばして、みんなでお小遣いもらうんだ!
シャイニングジャスティス、2号!」
ゆみが勢いよくポーズを決めると、黒き正義の光が彼女を包み込む。
『ガギュオォォォンッ!』
ガレージの奥で、赤と黒のトヨ86が凄まじいエンジン音を響かせた。
瞬く間に装甲が展開し、乙女型ロボットである
シャイニングジャスティス4号へと変形を遂げる。
彼女は「私も行く」とばかりに、恥じらいを含んだ内股のポーズで、
遊が作った巨大なのぼり旗をガシッと掴んだ。
「お前ら、気合十分だな。
造幣局の桜をバックに、最高に恥ずかしくて
神々しい正義を見せつけてやろうぜ」
遊の号令とともに、
ベーシックインカムを求める神に愛された少女
(とアンドロイドと車)たちは、
満開の桜と造幣局を目指して出撃するのだった。




