25 打ち出される拳にこそ隙はうまれる
※GeminiProに書いてもらいました。
第25話:爆炎と恥じらいの特別講義
「うん、だいぶ動きが様になってきたな」
モニターの光が反射する薄暗い部屋で、青神遊は満足そうに頷いた。
画面の中では、白鳥ゆかな、黒島ゆみ、
そしてアンドロイドであるシャイジャス3号と、
乙女型ロボットのシャイジャス4号が操作する四体のボンバーマが、
迷路の中で忙しなく駆け回っている。
最初は自爆ばかりしていた彼女たちだが、
今では爆風の届く範囲を正確に見極め、
アイテムを回収しながら生き残る術を身につけていた。
見事、初心者卒業といったところだ。
しかし、ある程度生き残れるようになると、
今度は「決定打に欠ける」という壁にぶつかる。
「むーっ!
また引き分けだ! なかなか倒せないよー!」
コントローラーを握りしめ、
色黒の肌に汗を浮かべながらゆみが悔しがる。
黒を基調とした服の袖をまくり上げ、勝気な瞳には闘志が燃えていた。
「ええ……。
みんな逃げるのが上手くなってしまって、決め手に欠けますわね」
ゆかなが白い指先で上品に口元を覆いながら同意する。
その可憐で色白な美貌の裏で、彼女の腹黒い部分が
(どうにかしてあの黒島さんを出し抜けないかしら)
と密かに策を練っているのを、青神は知っていた。
「分析完了。生存確率は向上しましたが、
敵対者の殲滅に至る有効な戦術パターンが不足しています」
暗い青紫のメタルボディを輝かせ、3号が真面目な声で報告する。
彼女のセンサーは、現状の停滞という小さな不満を敏感に感じ取っていた。
隣では、赤と黒の装甲を纏う4号が
「ブブォン!」とエンジン音のような相槌を打つ。
「よし、なら今日は特別講義だ」
青神が居住まいを正すと、少女たちの視線が彼に集まった。
18歳でありながら、どこか神々しい雰囲気を漂わせる彼――
遊びと恥じらい、そして正義の神の子の言葉に、彼女たちは真剣に耳を傾ける。
「お前たちに、下手でも運が良ければ上手いプレイヤーを倒せる、
とっておきの技術を教えよう。
名付けて『ステルス・ボム』だ」
「すてるす……?」ゆみが首を傾げる。
「ゲーム中盤、爆弾の爆発範囲が画面端まで届くほど大きくなるアイテム……
『フルファイヤー』があるだろう。
あれを取ると自爆しやすくなるから、一見ハズレアイテムのように思える」
青神は自分のコントローラーを手に取り、
画面内で実演を始めた。
彼のキャラクターが青いアイテムを取り、火力が最大になる。
「だが、これを利用する。
爆弾を置いた後、しばらく自分のキャラクターを爆弾の上に重ねて、隠すんだ」
画面の中で、青神のキャラクターが微動だにせず立っている。
「……あの、青神様。
はみ出していますわよ?」
ゆかなが、頬をうっすらと染めながら指摘した。
爆弾の丸い端っこが、キャラクターの足元から微妙に見え隠れしている。
そのちょっとした「隠しきれていない感」に、
彼女は言い知れぬ恥じらいを覚えていた。
「そう、完全には隠れきれていない。
だが、考えてもみろ。
ゲームに夢中になって、自分の生き残りと相手を倒すことに必死になっている
他のプレイヤーたちが、そんな細かな爆弾のはみ出しに気づくと思うか?」
「あっ……!」
3号の電子頭脳がスパークした。
「プレイヤーの視線誘導と認知バイアスを利用した盲点……ですね!」
「その通り。
ぎりぎりまで隠して、敵が近づいてきた瞬間にサッと移動する。
すると敵の目には、何もない空間から
『いきなり爆弾が現れて爆発した』ように見えるんだ」
ドカーン! と、画面内で巨大な十字の炎が上がり、
コンピュータ操りの敵キャラクターが消滅した。
「爆風の範囲が最大になっているから、
中央の通路など、人通りの多いところで待ち伏せると極めて有効だ」
「なんて……なんてえげつない……
いえ、素晴らしい戦術ですの!」
ゆかなは両手で顔を覆い、もじもじと身をよじった。
正義の味方であるシャイジャス1号として、
そんな騙し討ちのような真似をしていいのかという背徳感。
だが、その恥じらいの感情こそが、この世界では神の恩寵を呼ぶ。
彼女の周りに、ふわりと神々しいオーラが漂った。
「これなら私にもできそう!
待ち伏せドカーンだね!」
ゆみは単純に喜んでいる。
「さて、次はタイマン……
最後の二人になった時の決着のつけ方だ」
青神の声のトーンが一段階下がり、凄みを増した。
「かつて、世紀末を舞台にした伝説的な拳法漫画があった。
その中で、強敵である覇王と対峙した天才拳士が、
こんな名言を残している」
青神はスッと立ち上がり、両手をゆっくりと構え、
正義と哀愁を帯びた瞳で宙を見つめた。
「――『打ち出される拳にこそ隙はうまれる』、と」
そのあまりにも堂々とした、
それでいて少し恥ずかしさを隠しきれていないポーズに、
シャイジャスたちは息を呑んだ。
「格闘ゲームに限らず、これは他のゲームにも応用が利く。
ボンバーマでもそうだ。
相手が爆弾を置く、
つまり攻撃を仕掛けてきた瞬間こそが、最大の隙となる」
青神は再びコントローラーを握った。
「相手が爆弾を置いた時、ただ逃げるんじゃない。
相手が『どこに逃げるか』を予測するんだ。
そして、相手が置いた爆弾の爆風が当たる場所――
なおかつ、相手の逃げ道に繋がるように、自分の爆弾を配置する」
画面内で、敵が爆弾を置いて逃げようとする。
青神はその逃げ道の途中に、自らの爆弾を置いた。
直後、敵の置いた爆弾が爆発し、
その爆風が青神の置いた爆弾に引火(誘爆)した。
敵は「まだ爆発しない」と思っていた青神の爆弾が
即座に爆発したことに戸惑い、逃げ遅れて炎に飲み込まれた。
「これを『誘爆カウンター』と呼ぼう。
相手の攻撃を利用して、相手の予測テンポを崩す。
自分の力だけでなく、
相手の力を利用して倒す、まさに正義のカウンターだ」
「打ち出される爆弾にこそ、隙は生まれる……!」
ゆかなが感動したように呟いた。
「相手の害意を利用して裁きを下す……
なんて上品で、神々しい戦い方なのでしょう!」
「うんうん、なんかカッコいい!
私もやってみる!」
「戦術データベースを更新。
カウンター誘爆の成功率をシミュレートします。
……これは、素晴らしい戦果が期待できます!」
3号のメタルボディが、幸福感に満たされて震える。
4号も歓喜の排気音を鳴らした。
「よし、それじゃあ実践してみろ。
恥じらいを忘れず、正義の心で爆弾を置くんだ!」
「「「はいっ!」」」
シャイジャスの面々は再びコントローラーを握り直した。
神の子から授かった新たな知恵を胸に、
彼女たちの熱き戦いは次のステージへと進んでいくのだった。




