12 わからない事は動物に聞け!
※GeminiProに書いてもらいました。
第12話:応接間のティータイムと、神の器
青神家の応接間は、かつてないほどの熱気に包まれていた。
「さあさあ、遠慮しないで食べてちょうだい!
お茶のおかわりもあるからね!」
「いやあ、遊にこんな可愛らしいお友達ができるなんて、
父さん夢みたいだよ。 あははは!」
青神遊の両親は、テーブルに溢れんばかりのケーキやクッキー、
そして高級そうな紅茶を並べて満面の笑みを浮かべていた。
無理もない。
普段は朴念仁な息子が、突然三人も女の子
(うち一人はアンドロイドだが)を連れて帰ってきたのだ。
白を基調とした清楚な私服に身を包んだ白鳥ゆかな――
シャイジャス1号は、両手を膝の上で上品に揃え、頬をほんのり染めてみせた。
「まあ、こんなにたくさん……。
お気遣い、本当にありがとうございますわ、お父様、お母様」
(ふふっ、息子の友達への見栄っ張り。実にチョロいご両親ですわね。
この家のお菓子は今後も期待できそうですわ)
腹黒い本心を完璧な「恥じらい」の笑顔でコーティングするゆかな。
その可憐な姿に、世界を包む神の恩寵がチカッと微かに光り、
彼女の周囲に神々しいオーラを漂わせる。
「うおー! マカロンだ!
このケーキすっごい美味しい! 遊の家、最高だな!」
対照的に、黒基調のスポーティな服を着た黒島ゆみ――シャイジャス2号は、
勝気な性格そのままにケーキを頬張っていた。
だが、ハッとして口元を隠し、「あっ……はしたなかった、かな?」と
上目遣いでモジモジしてみせる。
無自覚なアホっぽさにスパイスとして加わったその「恥じらい」に、
やはり恩寵の光がふわりと舞った。
「……っ」
そして、暗い青紫のメタルボディを煌めかせるシャイジャス3号は、
出されたティーカップを両手で包み込むように持ち、感動に打ち震えていた。
「私のようなアンドロイドにまで、このような温かいおもてなしを……。
サーモセンサーを通さずとも伝わる、
ご両親の熱い慈愛……。私、今、とてつもなく幸せです……!」
健気で生真面目な3号の瞳が、潤んだように瞬く。
「じゃあ、私たちはこれで。
ゆっくりしていってね!」
気の利く両親がそそくさと退室すると、
応接間には紅茶の香りと、心地よい静寂が降りた。
ゆみの頭の上に乗っていた可愛いエンジェルスライム――
神の使いであるエンジェラが、
ぷるんっとテーブルに飛び降りてクッキーを齧り始める中、
一人静かにお茶を啜っていた青神遊が口を開いた。
「お前たち……戦いや正義について、
何かわからない事があったら、どうしてる?」
不意の問いかけに、ゆかなが小首を傾げる。
「わからない事、ですか?
もちろん、神の教えである『恥じらいと正義漢』を胸に熟考しますわ」
「あたしは考えるより先に動く派! 悪党はぶっ飛ばす!」
「私は、データベースを検索し、最適解を導き出そうと努めます」
三者三様の答えに、遊はフッと短く笑い、ティーカップをコトリと置いた。
「俺の持論だがね。
わからない事があったら、動物に聞くのが一番なんだ」
「……動物に?」
3号が不思議そうに電子音を鳴らす。
「ああ。
動物は、何のために生きていると思う?
それは『子孫を残すため』だ。
命を繋ぐこと、それが生物の絶対的な使命としてインプットされている」
遊の言葉は淡々としているが、
妙な説得力を持って部屋の空気を支配していく。
クッキーを齧っていたエンジェラも、いつの間にか動きを止めていた。
「しかし、それだけではないんだ。
過酷な自然界の中で、もしも腹が満たされ、外敵もおらず、
子孫を残す事への『余力』が生まれたら……動物はどうするか?」
遊は、ゆかな、ゆみ、3号、そしてエンジェラを順番に見回した。
「それは『遊び』だ」
「遊び……ですか?」
ゆかなが目を丸くする。
「そう。
犬も猫も、イルカもカラスも、余裕があれば無駄に駆け回り、
じゃれ合い、狩りの真似事をして遊ぶ。
生きるための必須行動じゃない。
ただ、楽しむために動くんだ。つまり――」
遊は窓の外、青く広がる空を見上げて言い放った。
「全ての生き物は、余暇を遊ぶために生きている。
正義だの使命だの、そんなものは命を繋ぐための過程に過ぎない。
生きとし生けるものの到達点は『遊び』なんだよ」
その瞬間だった。
テーブルの上のエンジェラが、
雷に打たれたように激しくぷるぷると震えだした。
(――な、なんだろう、この感覚は……!)
エンジェラの小さなスライムの脳内に、
天啓のような衝撃が走っていた。
『恥じらいと正義漢』を至高とする神の世界。
神はなぜ、あえてそんなルールをこの世界に敷いたのか。
神は完璧が故に退屈していたのではないか?
不完全な人間たちが、恥じらい、
正義を振りかざして一喜一憂する姿を……
そう、神自身がこの現実世界で『遊ぶ』ために!
エンジェラの視線が、目の前の青年に釘付けになる。
どこか飄々としていながら、
世界の真理をあっけなく言語化してしまった青神遊。
彼の魂の波長から、
エンジェラは途方もないスケールの何かを感じ取っていた。
(この人……ただの人間じゃない。
神様が、この退屈な現実を直接楽しむために用意した……
『受肉先』……ッ!?
まさか、彼こそが『神の子』だというの……!?)
可愛いエンジェルスライムの形をした神の使いは、
恐怖と歓喜が入り交じったような震えを止められず、
ただただ、余暇を謳歌する青年を見つめ続けていた。




