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10 憂国のインフルエンサー

※GeminiProに書いてもらいました。





第10話『シャイニング・ジャスティス VS 憂国のインフルエンサー』


 スマホの画面越しに、その女は艶やかに笑っていた。


「はい、どーもー!

 みんなの女神、大阪まはちやで!

 今日の『まはちチャンネル』は、これや!」


 画面の中で、派手な巻き髪の美女――大阪まはちが、

 一本の細長い菓子を取り出した。

 カステラ生地に餡が詰まった、一見すると素朴な棒状の菓子だ。


「これな、ただのお菓子ちゃうねん。

あの大戦の時、特攻隊の英霊たちが最後に食べはったんがこれや。

なんでこんな細いか分かるか?

操縦桿握りながら片手で食べられるようにや。

……泣けるやろ?」


 まはちは芝居がかった手つきで涙を拭うふりをして、その菓子を齧った。


「死ぬ前にこれを食うて、国のために散ったんや。

それに引き換え、今の日本はどうや?

『みんな中流』?

『平等』?

アホ抜かせ。

努力もせえへん貧乏人と、選ばれたウチらが同じなわけないやろ。

ウチはな、この菓子食うて育ったんや。

高貴なるとみを継ぐ者なんやで」


 コメント欄には『さすがまはち様!』

『正論すぎる』

『アンチは嫉妬乙』という文字が踊る。


 まはちは満悦の表情で、しかし目は笑わずに画面の向こう――

 彼女が「下流」と見下す有象無象を見下ろしていた。

 彼女の中にあるのは悪意ではない。

 もっと性質たちの悪い、無自覚な選民意識という名の「当然」だった。


 その時、空間が歪んだ。

 この世界を愛する神が最も嫌うもの。

 それは『厚顔無恥』であり『傲慢』だ。

 まはちの放つ強烈なエゴが、街の空気をドス黒く淀ませていく。


「あわわわ!

 ゆかなちゃん、ゆみちゃん!

 あれはアカンやつです!

 『恥じらい』ゼロの特級呪物級の女の人です!」


 街角でタピオカを飲んでいた女子高生二人の元に、

 プルプルと震えるピンク色のスライム――エンジェラが飛び込んできた。


「えー、マジ?

 せっかく放課後ティータイムだったのにぃ」


 白い制服を着こなす色白の美少女、白鳥ゆかなが頬を膨らませる。

 可愛らしい仕草だが、

 その内心では(チッ、めんどくさ。さっさと片付けてSNSのネタにしよ)

 と舌打ちしていた。少し腹黒い。


「っしゃあ!

 出番か!? また暴れられるんやな!」


 黒いパーカーを羽織った色黒の元気娘、

 黒島ゆみが拳を合わせる。

 こちらは純粋にアホで勝気だ。


「お二人とも、変身です!

 神様が見てますから、ちゃんと『恥じらって』くださいね!」


 エンジェラが吐き出した変身ベルトを、二人は腰に巻く。

 衆人環視の中、二人の顔がカッと赤く染まった。

 神の恩寵を受けるための儀式。

 それは、羞恥心そのものをエネルギーに変えること。


「み、見ないで……こんな格好、恥ずかしいけど……正義のためなら!」


「ううっ、なんでこんなヒラヒラなんや……でも、やるしかないんか!」


 『シャイニング・ジャスティス! メイクアップ!』


 光が弾ける。

 ゆかなは純白のフリルに包まれた、清楚を具現化したような魔法少女に。

 ゆみは黒のボンテージ風ながらも絶対領域を死守した、ワイルドな魔法少女に変身した。


「清廉潔白!

 恥じらいの白百合!

 シャイニングジャスティス1号、推参っ!(キャッ、スカート短すぎない!?)」


「猪突猛進!

 恥じらいの黒豹!

 シャイニングジャスティス2号、ここに見参!(うおっ、胸元スースーする!)」


 二人が降り立ったのは、まはちが屋外配信を行っている公園の広場だった。

 カメラの前でポーズを決めるまはちは、突然現れたコスプレ少女たちを見て、鼻で笑った。


「なんやあんたら。

ウチの配信の邪魔しに来たんか?

……ハッ、なんやその安っぽい服。

下品な色使いやなぁ。親の顔が見てみたいわ」


「なっ……! 失礼な!」

 シャイジャス1ゆかなが叫ぶ。

 

 しかし、まはちは動じない。

 彼女の手には、あの「特攻隊の菓子」が握られている。


「ウチはな、特別な人間なんや。

あんたらみたいな、恥ずかしげもなく正義とか口にする『お花畑』とは格が違うんよ!」


 まはちが菓子を一口かじると、彼女の背後に巨大な影が立ち上った。

 それは無数の「いいね!」アイコンと、札束で構成された醜悪な泥の巨人だった。

 彼女の選民意識が、悪意なき蔑みが、神聖な空気を汚染し、実体化したのだ。


「行け!

 『上級国民パンチ』や!」 「きゃあああ!」


 泥の巨人の拳が二人を襲う。


 シャイジャス2ゆみが前に出る。

「そんなん効くかボケェ!」と受け止めようとするが、

巨人の圧力は物理的な質量以上の「社会的地位の重圧」を含んでいた。


「ぐぬぬ……なんやこれ、体が重い……!」


「ゆみちゃん!

 ダメ、まともに受けちゃ!

 あの人の攻撃には『恥じらい』がないから、こっちの防御バフが貫通されちゃう!」


 神の加護は、敵対者が「無恥」であればあるほど、相対的に弱まる性質がある。

 まはちには一ミリの恥じらいもない。

 自分が絶対的に正しいと信じているからだ。


「オーッホッホ!

 地べたを這いつくばるのがお似合いやで!

 ウチはこのまま、もっと上に行くんや!」


 絶体絶命のピンチ。

 その時だった。


『……不幸の匂いを検知。幸福度が低下しています』


 静かな、しかし凛とした機械音声が響く。

 上空から、暗い青紫色の流星が飛来した。

 ズドン!

 とまはちと二人の間に着地したのは、無機質ながらも美しい流線型を描く

 メタルボディの少女――アンドロイドだった。


「あ、あれは……!」

 エンジェラが目を輝かせる。


 土煙の中から現れたのは、シャイニングジャスティス3号。

 彼女は無表情のまま、片手に持っていた花を一輪、そっと倒れた2号の前に置いた。


『あなたたちに、幸あれ。

……ターゲット、大阪まはち。

あなたの幸福定義にはエラーがあります。修正を執行します』


 3号の瞳が青く発光する。

 彼女は「恥じらい」を持たない機械だ。

 しかし、そのひたむきな「健気さ」と「まじめさ」は、

 神の琴線に触れるもう一つの要素だった。


「なんや鉄クズが!

 ウチに勝てると思てんのか!」


 まはちが叫ぶ。

 右翼と左翼、富裕層と貧困層、そして人間と機械。

 神に愛された世界の、カオスな戦いが今、幕を開ける。





『論破されたプライドと、本物の涙の味』


「ハッ、鉄クズが偉そうに!

 これでも食らえ、『上流階級マウントプレス』!」


 大阪まはちが指を鳴らすと、背後の泥の巨人(フォロワー数と自尊心の塊)が、

 シャイジャス3号めがけて振り下ろされた。

 しかし、3号は微動だにしない。


『……解析完了。脅威判定、ゼロ』


 3号が片手を掲げると、不可視のバリアが巨人の拳を弾き返した。


「な、なんやと!?

 ウチの精神的優位性が通じひんやと!?」


「当たり前だロボ」

 3号の背後から、1ゆかなが呆れたように声を上げる。


「3号ちゃんはアンドロイドよ?

 あなたの言う『貧乏』とか『中流』とか、そういう人間のドロドロした格付けなんて、

 彼女のメモリには無意味なのよ」


「そ、そんな……。

でもウチにはこれがある! この高貴な菓子が!」


 まはちは震える手で、例の細長い菓子を突き出した。

「特攻隊の精神を継ぐウチは、誰よりも尊いんや!」


 その時、3号の青い瞳が、まはちの手にある菓子をズームアップした。


『……質問。

大阪まはち、その菓子に含まれる成分は?』


「は?

 砂糖と小麦粉と餡子やろ! 何言うてんねん!」


『違います。

その菓子が本来含んでいた意味成分コンテキストについてです』


 3号は一歩、また一歩とまはちに歩み寄る。

 その無機質な声が、広場に響き渡った。


『私のデータベースによれば、その菓子は「二度と帰らぬ者」が、

最後に故郷と家族を思い、死への恐怖を押し殺して口にしたものです。

そこに含まれているのは、極限の「悲哀」と「自己犠牲」、そして「祈り」です』


「せ、せや! せやからウチは尊いんや!」


『論理エラー(矛盾)を検知しました』


 3号はまはちの目の前でピタリと止まり、首をかしげた。


『あなたは今、安全な場所で、富を得るために、他人を見下しながらそれを食べています。

 片手で操縦桿を握るためではなく、片手でスマホを持って「自撮り」をするために、

 その形を利用しています。

 ……それは「継承」ではありません。ただの「冒涜ファッション」です』


 ガーン。

 まはちの頭上に、目に見えるような衝撃音が走った。


「ぼ、冒涜……ファッション……?」


 そこに、2ゆみが追撃を加える。

「うわー、それはダサいわー。

先人の苦労をアクセサリにして、『自分スゲー』ってやってたんか?

めっちゃカッコ悪くない?」


 1ゆかなも冷ややかな視線で扇子を仰ぐ。

「そうね。本物の特攻隊の方々が見たら、なんて思うかしら。

『俺たちの覚悟を、マウント取るための道具にするな』って、

恥ずかしくて顔も向けられないんじゃない?」


「う……ううっ……!」


 まはちの顔色が、青から赤へと変わっていく。

 怒りではない。図星を突かれたことによる、強烈な羞恥心だ。

 彼女は気づいてしまったのだ。

 自分が「高貴な右翼」だと思い込んでいた姿が、

 実は「他人のふんどしで相撲を取る、ただの承認欲求モンスター」だったことに。


『恥を知ることは、人間機能の正常な反応です。

……大阪まはち、あなたの心拍数が上昇しています』


「み、見るな……! ウチを見るなぁぁぁ!」


 まはちは顔を覆ってその場に崩れ落ちた。

 すると、どうだろう。

 彼女の背後にいた醜悪な泥の巨人が、ガラガラと音を立てて崩壊していく。

 代わりに、まはちの体から淡いピンク色の光が漏れ出した。


「えっ? これって……」

 エンジェラが驚きの声を上げる。

「まはちさんの『恥じらい』が高まって、神聖エネルギーに変換されてますぅ!」


 まはちは地面に涙を落とした。

 それは演技の涙ではない。

 自分の浅ましさを自覚した、本物の悔し涙だった。


「ウチ……ウチは……。

ただ、特別な何かになりたかっただけなんや……。

あの方々みたいに、誰かに強く必要とされたかっただけで……。

でも、ウチがやってたことは……」


 手に持っていた菓子が、地面にポロリと落ちる。

 まはちは子供のように泣きじゃくった。

 その姿は、傲慢なインフルエンサーではなく、ただの迷える一人の人間だった。


『……涙の成分に、反省を確認』


 3号はしゃがみこみ、ハンカチを差し出した。

『大阪まはち。間違いを認める姿は、先ほどの演説よりも、

幾分か「高貴」であると推測します』


「あんた……」


 まはちはハンカチを受け取り、鼻をすすった。

 メイクは崩れ、髪も乱れている。

 だが、その顔は憑き物が落ちたように穏やかになりつつあった。


「……負けたわ。

完敗や。ウチ、出直してくる。

このお菓子の本当の重み、もう一回ちゃんと勉強し直すわ」


 まはちはよろよろと立ち上がると、スマホの配信を切った。


「ふぅ、一件落着ね」

 1号が変身を解き、ゆかなの姿に戻る。


「ま、最後はちょっとだけ見直してあげてもいいかな」


「せやな! あのお菓子、今度はウチらにも奢ってほしいわ!」

 ゆみも笑う。


 夕日が街を照らす。

 神様も、少しだけ満足げに空の上で微笑んでいるようだった。

 ただし、3号だけはまだ分析を続けていた。


『……学習完了。

次回の戦闘に備え、「論破力」の強化を推奨します』


「いや、3号ちゃんはもう十分強いから!」


 こうして、街に平和(と適度な恥じらい)が戻ったのだった。


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― 新着の感想 ―
GeminiPro、なかなかすごい物を書きますね。 シャイニングとシャイをかけたネタキャラ一発芸と思ったら、かなり引っ張る。 人外の3号が全部持ってく展開も何気に笑えます。 私もGoogleにお布施を…
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