祠の育て方、もしくは祠職人の育て方
憎い奴がいる? 復讐したい奴がいる? 面倒な奴がいる?
どうしていいかわからない?
それなら一つ提案しましょう。
『祠』を育てるのです!
相手を直接刺したり突き落したりしては、法に裁かれてしまいます。
だからといって直接呪いを使うのも大変です。
そういう時は『祠』を育てるのです。
まずは祠を生み出しましょう。
全く難しいことはありません。
ただいい場所を見つけて、いい具合に石あるいは木材を積んでおく、それだけです。
場所は山の中がベストです。全く人が入らない場所より、稀に人が来る程度の、人間社会に本当にちょっとだけ接しているような場所がいいです。
祠ができたとき、他の人が祈りや呪いを捧げてより強い祠にしてくれる可能性がありますし、最終的に憎い相手をそこに呼び出さなくてはいけないので「人が行ける・通える場所」がいいです。
場所を見つけられたら、次は材料を探します。近くに転がっている石や木で十分です。理想的なのは古そうな石や苔むした木です。
できる限り、現地調達した方がいいです。その方がよい祠に育ちます。
材料は最低でも四つ、集めてください。集めたら、積み木のように積んでください。
これで祠作りはおしまいです!
あとは育つのを待つだけです。
育ち方や育つ速度は、場所や材料によります。基本的に山を選んでいれば、約一週間で『古そうな祠』が完成するでしょう。
何もない山でも、そこは山。様々な歴史があり、命があり、そして死があったはずです。
……どこの場所も、同じではあるのですが。
それはさておき、山と言う場所は特別そういったものに関するものが存在しています。
それらが『祠っぽい何か』を見つければ、自分の住処、祠として育ててくれるのです。
気になるようなら、時々見に行くといいでしょう。■■が石を運んでいる姿が見られるかもしれませんし、■■が木を組んでいる姿が見られるかもしれません。運がいいと■■が歌い踊っている姿もあるかもしれません。
ただし、彼らに自分の姿を見せてはいけません。彼らに気付かれてはいけません。
本当のところ、何をどうしても、彼らはあなたに気付きます。何故ならそこは、彼らの領域。あなたが立ち入ったことに気付かないわけがないのです。
しかし祠を育てるのに忙しいので、無視していたいのです。
気付いていても、気付かないことにしておけば、彼らはあなたを「無」とみなすでしょう。
もし、彼らが材料探しやアイデアに困っているようであれば、ゴミ捨て場や廃材置き場から「かつて人の思いが込められていたもの」を持ってきて山に置いてくるといいでしょう。人形が一番いいです。それ以外でも「身に着けるもの」があればいいでしょう。
込められた思いや経験が多いほど、力になります。
そこまでやって祠が上手に育たないようであれば、その場所での祠育成および設置は諦めてください。場所とそこにある■■に祠作りの才能がありません。
祠が無事に育った方は、オメデトウゴザイマス! あとは何かと理由をつけて憎い相手を呼び出し、祠を破壊させればいいだけです。場合によっては触れさせるだけでもいいでしょう。
おっと、その前にもしよろしければ、ワタシに報告していただけると嬉しいです! ワタシ、祠の写真を撮るのが趣味でして。
さて、憎い相手と祠を接触させたら何が起こるのかを説明しますね。
呪いが発生します。当たり前ですよね?
■■にとって祠は、大事に育てた家、あるいは自身をまつる象徴です。それを壊されたら? むやみに触られたら?
嫌ですよね。自身の領域から出る前に、または出たとしても地の果てまで追いかけてやりますよね。
ハイ! これであなたの憎い相手はいなくなりました!
……ただちょっと、オメデトウゴザイマスとは言えない状況かもしれませんね?
そのまま何もないようでしたらオメデトウゴザイマス、なのですが、場合によっては■■はあなたに利用されたことに気付くかもしれません。または、あなたも祠の破壊にどういう形であれ関与していると勘付くかもしれません。
そうなれば、彼らはあなたの元にも呪いを与えに来るでしょう。
でも大丈夫!
ほら、思い出してください。
憎い奴がいる? 復讐したい奴がいる?
――面倒な奴がいる?
そういう時には、祠を作るのです!
またいい場所を見つけて、素材を集めて、祠を育てましょう!
一度祠を育てることに成功したあなたなら大丈夫! きっとより良い祠を育てることができるでしょう。
あ、また無事に祠が育ったら、ワタシに教えてくださいね? 祠の写真を撮って集めているので。
いや、過去に一度でも祠を育てたことのある人が育てた祠って、やっぱり慣れてるのか、美しいんですよね!
十回以上祠を育てた方の祠なんてね、もう芸術品ですよ!
……なので、もしあなたが祠を育てたのなら。
ぜひ、呪われてくださいね?
人を呪わば穴二つと言いますし。
そして呪われたのなら、また新しく、祠を育ててくださいね?
【終】




