第80話 走り書きの発見
ハーモニカケースを見る。
内側に、何か書いてある。
古い字。
子供の字?
いや、違う。
もっと——
「なに、これ」
ケースの底に、紙が挟まっている。
黄ばんだ紙。
丁寧に開く。
そこには——
『1980年8月16日
音楽室にて。
今日、不思議な女の子と会った。
カナミちゃん。
きっと、遠くから来た人。
もしかしたら——』
ここで、文字が途切れている。
「これ……」
「あれ?」
ヒナタが、覗き込む。
「俺の字じゃない」
「でも、日付が今日」
「偶然?」
違う。
これは——
でも、ありえない。
紙は、明らかに古い。
何年も前のもの。
なのに、日付は今日。
私の名前が書いてある。
「変だな」
ヒナタが、紙を裏返す。
そこに、続きがあった。
『カナミちゃんは、きっと未来から来た人だ。
証拠はない。
でも、分かる。
彼女の瞳は、ここにはない何かを見ている。
だから、この音を残す。
彼女が、未来に持って帰れるように』
■衝撃の真実
震える。
全身が、震える。
「カナミちゃん?」
ヒナタが、心配そうに。
「これ、誰が……」
「分からない」
でも、筆跡が——
よく見ると、ヒナタの字に似ている。
でも、もっと大人っぽい。
まさか。
「ハーモニカケースの裏も見て」
ヒナタが言う。
裏返す。
小さく、文字が刻まれている。
『彼女が消える前に、この音を、彼女の中に残したい
H.Y. 1980』
H.Y.
ヒナタ・ヤマダ?
違う。
ヒナタの苗字は、田中。
でも——
「変な偶然だね」
ヒナタが言う。
でも、偶然じゃない。
これは、メッセージ。
誰かからの。
もしかして、別の時間線の?
いや、考えすぎ。
でも——




