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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
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第8話 青い物との出会い(10歳)

【青い物との出会い(10歳)】


清掃作業の日。


古い倉庫の片付け。2050年以前の遺物が山積み。


箱を動かしていると、何かが転がり落ちる。


ガラスビーズ。


割れているけど、青く光っている。


拾い上げる。破片が指に刺さる。血が滲む。


痛い。でも、美しい。


監視員は、別の列を見ている。


ポケットに入れる。


その夜、ベッドの中で取り出す。


月明かりに照らすと、血の跡が紫に見える。


母が見せてくれた空の色に、少し似ている。


翌週、また清掃作業。


今度は、古い図書館の解体。


本は全て焼却される。知識は、データで十分だから。


でも、棚の隙間に、何かが挟まっている。


万年筆のインク瓶。割れている。


中のインクは乾いているけど、ガラスは深い青。


これも、ポケットへ。


一ヶ月後、配達員が何かを落とす。


古い切手。回収し忘れたもの。


空の写真。積乱雲。


配達員は気づかない。私が拾う。


処分場での強制労働。


ゴミの分別。その中に、青いプラスチック片。


玩具の一部。誰かが大切にしていた跡がある。


擦り傷。歯型。


これも、私のもの。


コレクションが増えていく。


ベッドマットレスの裏。小さな切れ目を作る。


毎晩、取り出す。


並べる。触る。舐める。


これが、私の抵抗。


小さな、でも確かな抵抗。


【完全記憶能力の発見(12歳)】


適性検査の日。


「これから、100個の単語を見せます。順番通りに暗唱しなさい」


スクリーンに単語が表示される。1秒ずつ。


私は見る。ただ、見る。


そして、目を閉じる。


頭の中で、スクリーンを再生する。


「リンゴ、量子、海底、飛行、結晶……」


100個、完璧に。


「もう一度、今度は1000個で」


また完璧。


検査官が上層部に連絡する。


「映像記憶能力。しかも完全型」


「確率は?」


「1000万人に一人」


特別プログラムへの編入が決まる。


でも、この能力には、副作用があった。


忘れられない。


母の顔も、父の声も、ユキの温もりも。


全て、鮮明に残っている。


これは、祝福か、呪いか。

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