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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
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第54話 感情の暴走

手を握られたまま。


ヒナタの手は、温かい。


でも——


心臓が、おかしい。


ドクン、ドクドクン、ドクン。


不規則なリズム。


管理局のモニターなら、今すぐ警告音が鳴っているはず。


そして——


視界が、変だ。


川の水が、青く見えるはずなのに——


紫が混じっている。


青に、紫のグラデーション。


これは、感情汚染第2段階の症状。


視覚の、さらなる変化。


「カナミちゃん?」


ヒナタが、心配そうに覗き込む。


「大丈夫? 顔色悪い」


「ちょっと、日差しが」


嘘をつく。


本当は、感情が暴走している。


制御できない。


ヒナタが近いと、もっと暴走する。


「日陰に行こう」


ヒナタが、立ち上がる。


手を引かれて、木陰へ。


大きな木の下。


涼しい。


でも、動悸は収まらない。




木陰で、しばらく休む。


川の音を聞く。


ザーザー。


一定のようで、不規則。


強弱があって、リズムがある。


「落ち着く?」


ヒナタが聞く。


「うん」


本当は、全然落ち着かない。


でも、このまま時間を過ごしたい。


「川の音、好き」


私が言う。


「俺も」


「ずっと聞いていられる」


「分かる」


二人で、川を見つめる。


流れる水。


同じ水は、二度と流れない。


常に、新しい水。


でも、川は川。


変わらない。


いや、変わる。


護岸工事で。


「この音も、変わるのかな」


私が呟く。


「多分」


ヒナタが、寂しそうに。


「コンクリートになったら、音が違う」


「硬い音?」


「そう」


今の音は、柔らかい。


石と石の間を、水が流れる音。


自然の音。


これも、失われる。

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