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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
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第51話 川との出会い

視界が開ける。


そこに——


川があった。


幅30メートルほど。


水は澄んでいて、底が見える。


浅瀬では、膝下くらい。


深いところでも、腰くらいか。


太陽の光が、水面でキラキラ光る。


まるで、無数のダイヤモンド。


「きれい……」


思わず呟く。


「でしょ?」


ヒナタが誇らしげ。


「俺の秘密の場所」


秘密の場所。


特別な場所。


私を、連れてきてくれた。


川岸に降りる。


大きな石がゴロゴロしている。


その間を、水が流れる。


「靴、脱いで」


ヒナタが、もう裸足になっている。


私も、靴を脱ぐ。


靴下も脱ぐ。


素足を晒す。


恥ずかしい。


でも、ヒナタは気にしていない。


もう、川に向かっている。


「つめたい!」


ヒナタが、大げさに叫ぶ。


でも、嬉しそう。


子供みたい。


「カナミちゃんも、おいで」


手招きされる。


恐る恐る、足を水に入れる。


「!」


冷たい。


本当に、冷たい。


15度? もっと?


足の感覚が、一瞬なくなる。


「冷たいでしょ」


「すごく」


でも——


次第に、慣れてくる。


冷たさが、心地よくなる。


血管が収縮して、また広がって。


不思議な感覚。


川底の感触


一歩、また一歩。


川の中を進む。


川底の石が、足の裏に当たる。


つるつるの石、ざらざらの石、丸い石、平たい石。


それぞれ違う感触。


「滑るから、気をつけて」


ヒナタが注意してくれる。


確かに、苔が生えている石は滑る。


バランスを崩しそうになる。


「わっ」


「大丈夫?」


ヒナタが、すぐに手を差し出す。


掴まる。


温かい手。


川の冷たさと、対照的。


「ありがとう」


「ゆっくりでいいから」


手を引かれて、進む。


水が、足の間を流れていく。


ひんやりとした流れ。


そして——


「あ、魚」


小魚が、足元を泳いでいく。


銀色に光る、小さな魚。


「オイカワかな」


ヒナタが言う。


「人に慣れてる」


確かに、逃げない。


むしろ、足の周りに集まってくる。


「くすぐったい」


魚が、足をつつく。


古い角質を食べているらしい。


「天然のフィッシュセラピー」


ヒナタが笑う。


フィッシュセラピー。


そんな言葉、知らなかった。


でも、確かに気持ちいい。

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