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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
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第48話 タケシの観察

「カナミちゃんて、不思議だよね」


タケシが、突然言う。


「え?」


「なんか、初めて見るみたいな顔してる」


「何を?」


「全部」


鋭い。


タケシは、鋭い。


「ラムネも、初めてみたい」


「……都会にはない」


苦しい言い訳。


「そう? 東京にもあるだろ」


「私の周りには」


「ふーん」


でも、タケシは追及しない。


代わりに——


「でも、それがいい」


「いい?」


「新鮮で」


また、その言葉。


「ヒナタも、楽しそう」


ヒナタを見る。


確かに、楽しそう。


「普段と違う」


「違う?」


「もっと生き生きしてる」


ヒナタが照れる。


「そんなことない」


「あるよ」


タケシが、私に向き直る。


「ヒナタのこと、よろしく」


「え?」


「あいつ、不器用だから」


「タケシ!」


ヒナタが、真っ赤になる。


「何言ってんだよ」


「本当のことじゃん」


二人が、言い合う。


でも、仲が良い証拠。


幼馴染。


ずっと一緒に育った二人。


羨ましい。




「じゃ、俺帰る」


タケシが立ち上がる。


「もう?」


「バイト」


「そっか」


「カナミちゃん、また遊ぼう」


「うん」


タケシが去っていく。


軽やかな足取りで。


二人になる。


急に、静かになる。


意識する。


二人きりだということを。


「もう一本、飲む?」


ヒナタが聞く。


「いいの?」


「フクばあちゃんとこ、まだ開いてる」


戻る?


でも——


「ここで、もう少し」


「うん」


並んで座る。


さっきより、近い距離で。


肩が、触れそうな距離。


夕方の光が、境内を照らす。


オレンジ色。


影が、長く伸びる。


「今日、楽しかった?」


「うん、すごく」


「タケシ、うるさくなかった?」


「ううん、面白い」


「そっか」


安心したような顔。


「タケシと、仲良いんだね」


「幼稚園から一緒」


「いいな」


「カナミちゃんは?」


「……友達、いない」


本当のこと。


「そんなことない」


「本当」


「じゃあ、俺が友達」


ヒナタが言う。


「タケシも」


「……ありがとう」


胸が、温かくなる。


友達。


初めての、友達。

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