第46話 歩きながら
三人で、商店街を歩く。
タケシが、私に質問する。
「カナミちゃんて、何歳?」
「17」
「俺たちと同じだ」
「誕生日は?」
「3月15日」
本当のことを言う。
2113年は言わないけど。
「早生まれか」
「学年一緒だね」
「どこの高校?」
「……私立」
曖昧に答える。
「へー、頭いいんだ」
「カナミちゃん、賢そうだもんね」
ヒナタが言う。
「そう?」
「うん、なんか大人っぽい」
大人っぽい。
そう見えるのか。
「でも、たまに子供っぽい」
「え?」
「水滴がきれいとか、煙がきれいとか」
タケシが笑う。
「確かに、変わってる」
「でも、いいと思う」
ヒナタがフォローしてくれる。
「新鮮な感じ」
新鮮。
150年後から来た私が、新鮮。
皮肉だ。
「彼氏いる?」
タケシが聞く。
直球。
「いない」
「なんで? 可愛いのに」
「タケシ、失礼だろ」
ヒナタが止める。
「別にいいじゃん、聞くくらい」
普通の17歳の会話。
恋愛の話。
私には、経験がない。
2130年では、遺伝子適合性で決まる。
恋愛感情は、非効率。
「好きな人は?」
タケシが続ける。
好きな人。
ふと、ヒナタを見る。
目が合う。
すぐに逸らす。
顔が熱い。
「……いない」
嘘。
もしかしたら——
「そっか」
タケシが、意味深に笑う。
「でも、すぐできるよ」
「そうかな」
「だって、ヒナタが——」
「タケシ!」
ヒナタが、大声で遮る。
「なんだよ」
「いいから」
二人の間に、何かある。
でも、聞けない。
聞くのが、怖い。




