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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
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第41話 記録と記憶

夜。


布団に入る。


でも、眠れない。


身体が、興奮している。


心臓が、ドキドキしている。


これも、症状の一つ。


感情の制御ができなくなっている。


でも——


嫌じゃない。


むしろ、心地いい。


生きている、実感がある。


17年間、感じたことのない感覚。


これが、人間?


これが、青春?


分からない。


でも、もっと感じたい。


明日も、ヒナタに会える。


それだけで、胸が高鳴る。


手の震えは、止まらない。


青は、緑に見える。


でも、構わない。


この感情を、大切にしたい。


例え、それが「汚染」だとしても。


窓から、月が見える。


満月に近い、明るい月。


月明かりが、部屋を照らす。


青白い光。


いや、今は緑がかって見えるけど。


でも、美しい。


全てが、美しい。


ヒナタと見る世界は。




私は、結局、この日何も記録できなかった。


学校の風景も、商店街の様子も、神社の姿も。


全て、エラーで終わった。


でも、覚えている。


全部、鮮明に覚えている。


教室の机の配置。


黒板の落書き。


屋上からの眺め。


閉店セールの貼り紙。


本屋のおばさんの寂しそうな顔。


ラーメンの味。


御神木の感触。


そして、ヒナタの全て。


これは、記録じゃない。


記憶。


デジタル化できない、生きた記憶。


それで、いいと思った。


いや、その方がいいと思った。


スキャンエラー。


それは機械の故障じゃない。


私の心が、初めて「いやだ」と叫んだ証。


人間に戻っていく、第一歩だった。

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