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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
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第38話 神社への道

ヒナタが向かったのは、神社。


「音無神社」


鳥居が見える。


朱色の、大きな鳥居。


「ここ、好きなんだ」


「静か?」


「それもあるけど」


階段を上る。


石段。苔が生えている。


滑りやすい。


「気をつけて」


ヒナタが、手を差し出す。


また、手をつなぐ。


温かい手。


でも——


手が震えているのが、伝わってしまう。


「大丈夫?」


「うん」


嘘。


震えが、止まらない。


むしろ、ヒナタに触れていると、もっと震える。


なぜ?


分からない。


でも、手は離さない。


離したくない。


階段を上りきる。


境内。


静かだ。


蝉の声は聞こえるけど、人はいない。


「あそこ」


ヒナタが指すのは、大きな木。


「御神木」


樹齢300年の欅。


太い幹。天に向かって伸びる枝。


圧倒的な、存在感。


近づく。


「触ってみて」


言われて、手を当てる。


ざらざらした、樹皮。


温かい。


いや、これは——


振動?


微かに、震えている。


生きている。


この木は、生きている。


300年も。


私の手の震えと、木の震えが、共鳴する。


不思議な、感覚。


「どう?」


「生きてる」


「でしょ?」


ヒナタも、木に手を当てる。


二人で、木に触れている。


300年の時間に、触れている。


ふと、思う。


この木は、これからも生き続ける。


私たちがいなくなっても。


町が変わっても。


この木だけは——


「願い事、してみる?」


ヒナタが言う。


「願い事?」


「ここ、願いが叶うって」


言い伝え。


非科学的。


でも——


目を閉じる。


願う。


何を?


この震えが、止まりますように?


違う。


この時間が、続きますように。


ヒナタと過ごす、この時間が。


目を開ける。


ヒナタも、目を開ける。


「何願った?」


「秘密」


「ずるい」


でも、ヒナタも言わない。


きっと、同じようなことを願ったのかも。

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