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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
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第32話 身体の変化

「カナミちゃん、顔色悪いよ」


ヒナタが、私の額に手を当てる。


「熱はないけど……」


彼の手が、冷たく感じる。


いや、私が熱いのか。


「ちょっと、座って」


椅子に座らされる。


深呼吸する。


でも、動悸が収まらない。


ドクドクと、心臓が暴れている。


これが、感情汚染?


第1段階。


指先の震え。確かに、震えている。


親指と人差し指が、小刻みに。


まるで、私の意志とは関係なく。


瞳孔の不規則な収縮。


きっと、起きているはず。


視界が、少しぼやける。ピントが合わない。


そして——


「あ……」


青が、変だ。


ヒナタの学ランの、紺色。


少し、緑がかって見える。


いや、紺色は青じゃない。でも、青系統の色が、全部——


緑が混じっている。


これも、症状の一つ。


視覚変化。


「水、飲む?」


ヒナタが、水筒を出す。


「ありがとう」


飲む。


麦茶。昨日と同じ味。


でも、なぜか違って感じる。


もっと、濃く感じる。


味覚も、変化している?


「疲れた?」


「ううん、大丈夫」


嘘。


全然、大丈夫じゃない。


身体が、私のものじゃないみたい。


17年間、完璧にコントロールしてきた身体が、反乱を起こしている。


「無理しないで」


ヒナタが、心配そう。


「ごめん、案内するって言ったのに」


「違う、私が——」


何て説明すればいい?


君を見ていたら、身体がおかしくなった?


君を記録できなくて、パニックになった?


言えない。


「暑さかな」


「そうかも。慣れてないもんね」


ヒナタが、納得してくれる。


よかった。


でも——


手が、まだ震えている。

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