第30話 学校への道
学校への道は、上り坂。
ゆるやかな傾斜。でも、汗が噴き出す。
「大丈夫?」
ヒナタが、心配そうに振り返る。
「うん、平気」
でも、息が上がっている。
2130年では、こんなに歩かない。移動は最小限。効率的に。
「もうすぐだから」
ヒナタが、手を差し出す。
「掴まって」
手を、取る。
昨日も触れた、温かい手。
引っ張られて、坂を上る。
「ほら、見えた」
坂の上に、学校が見える。
三階建ての校舎。白い壁。赤い屋根。
校門が、開いている。
『県立東陽高等学校』
門柱に、校名が刻まれている。
「俺の学校」
ヒナタが、少し誇らしげに。
「入っていいの?」
「部活の子もいるし、大丈夫」
校門をくぐる。
広い校庭。
トラックが描かれている。400メートル。
サッカーゴール。バスケットコート。
鉄棒。砂場。
体育の授業で使うんだろう。
校舎に近づく。
窓がたくさん。教室が並んでいる。
「2年3組」
ヒナタが、二階の窓を指す。
「俺の教室」
「入れる?」
「うーん、鍵かかってるかも」
でも、試してみる。
昇降口から入る。
薄暗い廊下。
独特の匂い。
上履きと、汗と、チョークと、若さの匂い。
「懐かしいな」
ヒナタが言う。
「夏休みだと、違う感じ」
階段を上る。
木の階段。ギシギシと音がする。
二階。
廊下の窓から、光が差し込む。
埃が、光の中で踊っている。
「2年3組」
教室の前に立つ。
ドアに、小さな窓。中が見える。
机が、整然と並んでいる。
黒板。チョークの跡が少し残っている。
「開いてる!」
ヒナタが、ドアを開ける。
中に入る。




