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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
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第28話 夢の中で

眠りに落ちる。


夢を見る。


青い空の夢。


でも、2130年の記憶じゃない。


今日の空。


1980年の空。


雲が、流れている。


蝉が、鳴いている。


そして——


ヒナタがいる。


「カナミちゃん」


呼ばれる。


振り向く。


彼が、笑っている。


手を、差し出している。


「一緒に行こう」


どこへ?


分からない。


でも——


手を、取る。


温かい手。


二人で、歩き始める。


どこまでも続く、夏の道を。


夢の中でも、感じる。


風を。


匂いを。


温度を。


そして——


幸せを。




今、思い返すと、あの日が全ての始まりだった。


1980年8月10日。


私が、本当に生まれた日。


転送で再構築された私は、確かに違う私だった。


データを集める機械じゃない。


感じる人間としての、私。


そして、ヒナタ。


彼との出会いが、全てを変えた。


「タメだね」


その一言が、私に教えてくれた。


対等であることの、素晴らしさを。


効率じゃない。


正確さでもない。


ただ、一緒にいることの、幸せを。


あの夏の6日間。


短いけど、永遠。


今でも、感じる。


川の冷たさを。


ラムネの刺激を。


蝉の声を。


そして——


彼の手の、温もりを。


記録はできなかった。


でも、記憶に残っている。


永遠に。


それで、十分。


いや——


それこそが、本当に大切なこと。


窓の外を見る。


2130年の東京。


電子ドームの隙間から、少しだけ見える空。


青い。


あの日と同じ、青。


でも、違う。


あの日の青は、もっと——


生きていた。


ヒナタと見た、青だったから。

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