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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
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第25話 一人になって

「じゃあ、また明日」


ヒナタが、手を振る。


「うん、また明日」


私も、振り返す。


彼の姿が、夕陽に照らされている。


オレンジ色に、染まっている。


美しい。


記録したい。


でも——


フレームを作っても、エラー。


なぜ、彼だけ記録できない?


システムの故障?


それとも——


私の、心?


宿に向かう。


任務用に用意された、小さな旅館。


「お帰りなさい」


女将さんが、迎えてくれる。


「お風呂、沸いてますよ」


お風呂。


初めての、お風呂。




脱衣所。


服を脱ぐ。


汗でベタベタ。


こんなに汗をかいたのは、初めて。


鏡を見る。


頬が、赤い。


日焼け?


それとも——


浴室に入る。


湯気が、もうもうと。


視界が、白い。


でも、2130年の白とは違う。


温かい白。


生きている白。


身体を洗う。


石鹸の泡。


シャボンの匂い。


清潔だけど、人工的じゃない。


髪を洗う。


シャンプーの匂い。


花の香り?


リンスを使う。


髪が、さらさらになる。


湯船に入る。


「熱い!」


思わず、声が出る。


でも、徐々に慣れる。


身体が、お湯に包まれる。


温かい。


全身が、ほぐれていく。


筋肉の緊張が、解ける。


気持ちいい。


目を閉じる。


今日一日を、思い返す。


転送。


再構築。


熱い空気。


蝉の声。


そして——


ヒナタ。


彼の笑顔が、瞼の裏に浮かぶ。


なぜ、こんなに印象的?


会ったばかりなのに。


胸が、ドキドキする。


これは、なに?


感情指数で言えば、異常値。


でも——


悪くない。


むしろ、心地いい。

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