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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
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第23話 記録できない瞬間

「そろそろ記録しないと」


思い出す。任務のこと。


親指と人差し指で、フレームを作る。


川の風景を、収めようとする。


光スキャナーが起動する。


でも——


エラー。


なぜ?


もう一度。


川面のきらめき、対岸の緑、青い空——


エラー。


「どうしたの?」


ヒナタが、心配そうに。


「上手く……できない」


「指カメラ?」


「うん」


嘘じゃない。本当に、できない。


風景は、記録できるはず。


でも、この瞬間は——


みんなの笑い声、ラムネの泡、川の冷たさ。


これは、風景じゃない。


体験。


生きている瞬間。


データにできない。


いや——


したくない。


心のどこかが、拒否している。


「写真なんか撮らなくても、覚えてればいいじゃん」


タケシが言う。


「そうだよ。心のアルバム」


別の少年も。


心のアルバム。


記憶。


データじゃない、記憶。


「そう……だね」


フレームを、下ろす。


代わりに、目を閉じる。


音を聞く。


川のせせらぎ、蝉の声、みんなの話し声。


匂いを嗅ぐ。


水の匂い、草の匂い、夏の匂い。


肌で感じる。


風の感触、水の冷たさ、太陽の暖かさ。


これを、心に刻む。


データじゃなく、記憶として。

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