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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
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第14話 再構築の苦痛

【再構築の苦痛】


最初に形成されるのは、一点。


意識の核。これが私の中心。


ここから、全てが始まる。


次に、脊髄。


神経の束が、稲妻のように伸びていく。電気信号が走る。ビリビリと、存在が確定していく。


痛い。


神経が形成された瞬間から、痛みが始まる。


存在することの、痛み。


骨が形成される。


カルシウムの結晶が、設計図通りに配列。背骨から肋骨へ。一本、また一本。


パキパキと、音がする。いや、音じゃない。振動。存在が固まっていく振動。


頭蓋骨が形を成す。脳を守る器。


指の小さな骨まで、206個全て。


内臓が、骨格の中に収まっていく。


心臓が形を成す。まだ動かない。空っぽの袋。


肺が膨らむ。まだ呼吸しない。ただの空洞。


胃が、腸が、肝臓が、腎臓が、次々と定位置に。


まるで、パズルのピースが、はまっていくように。


血管が、全身に網を張る。


動脈、静脈、毛細血管。赤い川が、身体という大地に流れを作る。


まだ血は流れない。ただの管。


筋肉が、骨を包む。


繊維が編まれていく。赤い肉が、層を成していく。


力の可能性が、形になる。


そして——


ドクン。


心臓が、最初の鼓動を打つ。


生まれた。


私は、生まれた。


血が、流れ始める。


熱い。自分の血が、こんなに熱いなんて。


肺が、空気を求めて膨らむ。


でも、まだ皮膚がない。


剥き出しの筋肉が、1980年の空気に触れる。


熱い!


灼熱。


これが、夏。


生の夏。


皮膚が、慌てて形成される。


表皮、真皮、皮下組織。層になって、私を包んでいく。


毛穴が開く。汗腺が機能し始める。


すぐに、汗が噴き出す。


髪が、睫毛が、産毛が、生える。


黒い髪。セミロング。少し癖がある。これも、設計通り。


爪が、伸びる。


透明な爪。すぐに、少しピンクになる。血が通った証。


最後に、瞳。


光スキャナーを含んだ、青灰色の瞳が開く。


世界が、見える。


そして——


私は、1980年の世界に、生まれ落ちた。

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