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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
103/103

第103話 記憶の空

27歳の私は、今日も空を見上げる。


青い空。


雲が流れ、風が吹き、時々雨が降る空。


でも、私にとって一番美しい空は——


記憶の中の、1980年の夏の空。


ヒナタと見上げた、あの空。


指を持ち上げて、フレームを作る。


かつて記録しようとして、できなかった仕草。


今は、ただ思い出すための儀式。


「それ、いつもやってますよね」


ソウマが優しく言う。


「写真を撮るみたいに」


「そう、心のカメラです」


「素敵ですね」


フレームの中に、空を収める。


青い、青い空。


そして、心の中で聞こえる。


風鈴の音。 蝉の声。 ハーモニカ。 花火。 雨。


そして、ヒナタの声。


「カナミちゃん、空ってきれいだね」


うん、きれい。


とても、きれい。


風が吹いた。


本物の風が。


そして私の髪を揺らしながら、あの夏の匂いを運んできた。


どこか遠くで、ハーモニカが聞こえる気がする。


きっと気のせい。


でも、それでいい。


私の中で、あの夏は永遠に生きている。


17歳の夏。


ヒナタと過ごした、たった7日間。


でも、一生分の思い出。


そして今、27歳の私には、新しい日々が始まっている。


ソウマと見上げる、この空も。


いつか、大切な記憶になるのだろう。


空は、今日も青い。


ヒナタが見ていた、あの青だ。


私たちが一緒に見上げた、永遠の青。


そして、これから見ていく、新しい青。


記録はできなかった。


でも、記憶は——


ここにある。


ずっと、ここにある。


増えていく。


青い地球の空の下で。


―― fin ――

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