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夏を記す瞳に君のかけら  作者: 大西さん
序章:灰色の空の下で
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第10話 リョウの恋人(15歳)

【リョウの恋人(15歳)】


ある日、リョウが言う。


「実は、俺、恋をしたことがある」


「誰に?」


「ユキ。知ってる?」


ユキ先輩。22歳で任務失敗。感情崩壊。


「彼女と?」


「俺が16歳の時。彼女は18歳」


リョウの目が、遠くを見る。


「一緒に音楽を聴いた。秘密の場所で」


「どこ?」


「屋上の、給水塔の影」


そこは、監視カメラの死角。


「彼女は、優秀だった。でも、優しすぎた」


「何があったの?」


「1963年に派遣された。そして——」


リョウが拳を握る。


「恋をした。現地の少年と」


「それで?」


「記録を全て消した。代わりに、記憶だけを持ち帰った」


「今は?」


「隔離病棟で、絵を描いてる。青い空の絵を」


リョウが、小さな紙片を見せる。


ユキが描いた空の一部。


「これを、彼女がくれた。『忘れないで』って」


青が、層になっている。深い青。悲しい青。


「リョウは、彼女を?」


「愛してた。今も」


「会いに行かないの?」


「行けない。彼女は、もう俺を覚えていない」


リョウの頬を、涙が伝う。


感情を見せない訓練を受けたはずなのに。


「でも、俺は覚えてる。彼女の笑顔も、歌声も」


これが、恋。


データにできない、感情。


【最年少での選抜(15歳)】


「カナミ、特別任務への選抜が決定しました」


施設長の部屋。


「影エージェント。過去の記録者」


時間遡行技術の説明。


「君は最年少です。16歳で手術を受けます」


「なぜ私が?」


「君の完全記憶能力が必要です」


でも、本当の理由は別にあった。


「君は、感情を完全に消せていない」


「失格では?」


「いいえ。適度な感情は、記録を豊かにする」


矛盾している。


でも、これはチャンスだ。


過去に行ける。青い空が見られる。


「受けます」


「リスクは理解していますか?」


「はい」


嘘だ。


でも、リスクより、青への憧れが勝った。

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