一つ
人生は一度きり、だから今を一所懸命に生きなさい。こんな滅茶苦茶なことが言われ始めたのはいつからだろうか。人生は一度。今を生きる。寝言は寝て言え。人生が一つというのは、トマトの種が一つしかないと言っているのと同じことだ。今を生きるのは、千鳥足で紙の縁を宙返りするような行為だ。優れた曲芸師でなければ不可能だ。ピエロが口笛で呼んでいる。
もし我々の人生が一つならば、星々もただ一つだ。そうでなくちゃ示し合わせがつかない。始まりも終わりも一つ。決まっている。道は一つしかなく、寄り道もなしだ。そんなのってあんまりじゃないか。