8. 仙台空港から新千歳、レンタカーで北上
朝、目が覚めると、またもやわたしひとりだった。
空気が乾燥していたせいか、微かに喉がヒリヒリと痛みを訴えた。時刻はまだ六時前だ。わたしはベッドから出て、洗面所でうがいをした。正面の鏡を見て、ヤバい、日焼けしてる、って思った。お手入れが必要だ。ちょうどいいや、彼らがいないうちに身支度をすべて済ませてしまおう――。
ふたりはどこに行ってしまったのか、と思わないでもなかったが、たぶん、散歩にでも行っているのだろう。どうやらふたりはとても気心が知れた間柄らしく、昨晩は酒を飲み交わしながらずいぶんと話がはずんでいた――話の内容はなにがなんだかよくわからないものだったが。というか、喋っている内容自体がよく聞き取れなかった。酔ったふたりは、どこかの地方の方言なのだろうか、日本語であるには違いないのだろうけど奇妙な言葉で話すようになった。ビールから日本酒に切り替えたあたりから彼らは料理などにはまったく手をつけずに酒だけをガンガンに飲んだ。退屈したわたしが止めなければ際限なく飲んでいたに違いない。
〈道行〉と落ち合ってしまえば、その先は楽だ。そうヌイは言っていた。今日中に決着がつくといいのだけど、と思ってしまう。それは楽観的すぎるかな。明日は月曜だから、なにもなければ普通に会社に行く日だ。もちろん今のわたしはそれどころじゃないから、場合によっては有休を取ると連絡を入れなければなるまい。でも後にしておこう、もし今日中にケリがついたら明日は仕事に行けるかもしれないから。
命のかかった問題を抱えているときに休暇の心配をするなんて――そう考えてわたしは可笑しくなった。
次に会うひとはリセという名前らしい――酔ったふたりからわたしはそれを聞き出した。どんなひとだろうか。〈夢廻〉と言ったか、そのひとの持っているという能力は。〈道行〉はなんとなくわからないでもないのだけど、〈夢廻〉というのはいったいどういうもののことだろう。ま、考えたところでわたしなんかが思いつくようなものではないのだろうけど……。
そんなことを考えながらわたしが身支度を整え終えたころ、ちょうどふたりは部屋に戻ってきた。
「次にいく場所のイメージが掴めた」
ヌイはそう言った。
「どこだったの?」
わたしは訊く。そこからふたりが答えた内容にわたしはやや拍子抜けすることになった。
北の方角。海を越える。それだけ。
「それはつまり、北海道、ってこと?」
ふたりは黙っている。答えを持ってないということか。
「国外という可能性はあるの?」
「それはない」
モルトは答えた。ふむ。でも佐渡ヶ島かもしれんよな、とわたしは考えたが、そういや今は仙台にいるんだから佐渡は北にはあたらないか、と思い直した。
「んー、まぁ、北海道ってことね。どうやっていけばいいんだろ」
わたしはそう口にしたが、ふたりはなにも返さなかった。ノーアイデアということか。
しょうがない――わたしはスマホを取り出した。
一時間後、わたしたちは仙台空港のロビーにいた。新千歳行きのチケットは意外にあっさりと手に入った。搭乗時間まで間があるので、軽食を摂りながらのんびりするしかなかった。モルトはどこかに歩いていってしまい、ヌイとわたしが並んでベンチに座っていた。
「ねえ、ヌイ。考えてみたら、わたし、飛行機になんか乗っていいのかな」
「……なんでそう思う」
「だって、ほら、空のうえでなにか事故があったら、さすがのヌイでもわたしを守りようなんてないじゃない? わたしを排除するために世界が飛行機を墜落させるなんてことがあったりしたら、もうどうしようもなくない?」
「うむ。確かに悠香がひとりだったらそういうことは起こりうる。だが今は大丈夫だ。オレが一緒である限りはそういう心配はない」
「すごい自信ね。ヌイが乗った飛行機は絶対に落ちないってこと?」
「というか、オレといる限り君は墜ちる飛行機に乗り合わせることを選択しない」
「んー、どういうこと? じゃあ、ヌイと一緒じゃなかったらわたしは墜ちる飛行機に乗ることを選んじゃうってことなの?」
「そうだ。もしそこに墜ちることになる飛行機があれば、ということだが」
「墜ちることになる飛行機」わたしはその言葉を繰り返した。
ヌイは頷いた。
「いわば世界は事故に巻き込まれることになるすべての関係者の調整をしたうえでそれを引き起こしているんだ、その事故の規模の大小に関わらず、な。偶然に巻き込まれるものなどいない。排除すべき対象がそこに現れたら、ここぞとばかりに巻き込むさ。世界にとっては好都合だ」
「ふーん」
わたしは考える。
「そうか。事故というのはわたしが死ぬだけでなく他にも影響を受けるひとが常にいるわけで、そういうある意味需要と供給みたいなもののバランスが取れたときにだけ起きるってことか。合ってる?」
「そういう見方もできる」
「わたしは需要リストに載っていて、供給のリストと常にマッチングされているわけか。でもなんでヌイと一緒なら大丈夫なわけ?」
「……君の言葉を借りていえば、まずオレ自身は決してそのリストに載ることがないのと、マッチングされた結果のリストをオレが事の起きる前に見ることができるから、ということになるかな。これまでの二回の事故においては君が巻き込まれることがわかったからこそ、それを回避させることができた、とも言える」
「なるほど……」
なるほど、とは返してみたものの、それが具体的にどういうことを意味するのかイメージできたわけではない。
「ま、いいわ。とにかくわたしはヌイと一緒にいる限り安全なのね。じゃあ、余計なことは考えないでおく」
そう言ったわたしにヌイは頷いた。
「日本の空港もしばらく見ないうちに変わったよねぇ」モルトが戻ってきて、わたしたちふたりの向かいに座りながらそんなことを言い出した。「建物から直接、飛行機に乗れるなんてびっくりだ」
「え、建物から直接じゃなかったらどうやって飛行機に乗るの?」
わたしは尋ねる。モルトは笑うだけだ。
「ああ、あれか。動く階段みたいなやつ。確かにアメリカの大統領なんかが来日するときはいったん階段使って地面に降りてるよね。なんでそうするんだろ」
「昔はそれが普通だったんだ」
「それっていつの話? わたしが小さな頃でもそんなの見たことない気がするけど」
「さあ、どうだったかなあ。それ自体ももう覚えてないな」
モルトはそう答えた。もしかしたらすごい田舎のほうの空港とかだったらまだああいう動く階段で飛行機に乗り降りするところがあるのかもしれないなあ、とわたしは思ったけど、そういう田舎をバカにしているように受け取られるかもしれないと思ってそれ以上その話題を続けるのをやめた。
機内では三人の座席はバラバラだった。ヌイがそばにいないことにわたしは一抹の不安を覚えたが、さっきのやりとりを思い出して自分を落ち着かせた。実際のところ、仙台から新千歳空港まではあっという間だった。まだ朝と呼べる時間のうちに、わたしたちは北海道の地に足を踏み入れたのだった。
わたしたち三人は到着ロビーを抜けて、イベント広場のようになっているところに出た。適当なところで立ち止まってわたしは訊く。
「で、ここからはどうするの? どこに向かえばいいわけ」
その問いにモルトは答える。
「北。もっともっと北。北海道の中央をひたすら北上するイメージがある。あれは……自動車専用の道路かな。でも、それが終わってももっと北に進む感じ」
「自動車専用? 高速道路ってこと? ちょっと待って……」
わたしはスマホを取り出して地図を表示させた。
「ああ。確かに高速道路があるわ。北海道の真ん中を北に進むヤツが」
画面をモルトとヌイに見せた。彼らは頷く。
「でも、自動車か……。タクシーで行ったらとんでもないことになるよね」
「悠香さん、免許証、持ってる?」とモルト。
「免許? いちおう持ってるけど……。わたし、ペーパーなのよ。就職してから一度も運転してないわ」
「問題ない。レンタカーを借りるのに必要なだけだから。俺もヌイも運転はできる」
「どういうこと? ふたりとも運転はできるけど免許は持ってないってわけ?」
わたしがそう訊くとモルトはワハハと笑った。
「ま、いいけど。……とにかくレンタカーね」
ぐるりと見回すと、すぐ近くにレンタカーのカウンターがあった。わたしはそこに向かった。
レンタカーなど借りたことがなかったけども、カウンターにいたスタッフの人と話して手続きを進めた。普段だったら事前にホムペで数社のサービス内容を比較検討とかするなどの慎重さを発揮するところだけど、わたしも今回でだいぶ行き当たりばったりのやり方に慣れてきている。なにも考えずに適当に決めていく。けども、一点、わたしではわからない項目があった。後ろを振り向くと、ヌイとモルトのふたりは少し離れたところで立ち話をしていた。大声で訊くことになる。
「ねえ、ちょっと! 車を借りる日数を決めないとならないんだけど。今日一日でカタはつくの? いつここに戻ってくる?」
ふたりの顔に困惑が浮かんだ。それを見てわたしはイヤな予感を覚える。
「そうだなあ……。オレたちはここに戻るとは限らないかも」とヌイ。
「俺のイメージだと、リセに会うだけで今日一日はつぶれることになりそうだが」とモルト。
わたしは心の中だけでため息をついた。
「わかった。じゃ、二日で申し込んどくわ」
ここには戻らないかもしれないだなんて――戻らない前提じゃレンタカーなんて借りられないじゃないの、と頭のなかで愚痴を呟く。それに明日の有給休暇取得も確定だ、ま、北海道に向かった時点でほぼそうなるとは思ってたけど。
レンタカー業者の送迎車で空港の離れたところにある事務所に連れて行ってもらった。見るとその近辺には数社、似たようなレンタカー店が並んでいる。
事務所の脇にはすでにわたしが申し込んだ車らしき日産の白いコンパクトカーが用意されていた。日産にしたのは実家の車と同じメーカーを選んだというだけである。
料金の支払いを済ませ、わたしは実際に車を確認しながらスタッフから説明を受けた。ヌイとモルトは離れたところからそれを見ていた。ふたりは運転するつもりがあるのだろうか。
わたしが運転席に座ると、ふたりもやってきてそれぞれ車に乗り込んだ。モルトが助手席。ヌイは後部座席。ヌイが助手席に座らなかったことを残念に思う気持ちが自分のなかにあることに気づいて、わたしはちょっと困惑する。まばたきを数度、した。
「えーと、高速を北に向かうのよね……」
そう呟きながらカーナビを操作する。使い方は聞いたばかりなので問題ない。北に伸びる高速道の終端よりちょっと先に目的地をセットした。
〈ルート案内を開始します〉
カーナビから音声。
「ほな、行きますか」
そう言ってわたしはそろそろとアクセルを踏み込んだ。レンタカー店の前の道をカーナビの指示通り左に進む。
「どこかで停めてもらえれば運転代わるけど」
モルトのそのセリフにわたしは返す。
「って、免許持ってないひとに運転させられないわ。警察に見つかったらどうするの」
ワハハとモルトは笑う。
「ま、代わってほしくなったら言ってくれや。先は長いから」
そのセリフを黙って受け流し、わたしは運転に集中する。ひさびさの運転だが、いちおう体がそれを覚えてくれている感覚がある。実家と同じ日産車にしたのも正解だったようだ。違和感がない。
空港に沿ってぐるりと行く感じに進み、すぐに高速道路の入り口に出た。
本線に合流するのにかなり緊張したが、なんとかクリア。そこからは流れに乗るだけなので難易度は高くない。だがわたしには周囲の景色などを見る余裕はなかった。ひたすら運転に集中。
しばらくハンドルを握り続け、わりかしすぐに札幌に到着した。交通量が多いので完全に周囲の流れに合わせて走らすだけの感じ。カーナビの指示に従ってぐるっとジャンクションを通過した。
そのあとはひたすらまっすぐのようだ。まわりを走る車もだいぶ少なくなる。運転にも余裕が出てきた気がする。考えてみればこれはわたしにとって初めての北海道旅行なのだ。少しは景色も堪能せねば――などと思ったりもするが、特に北海道に来たと実感させてくれるようなものは目に入らなかった。
緊張が解けてきたせいか、わたしのお腹がぐうと鳴った。
「昼飯にはちょっと早いが、そろそろ休憩しないか」
モルトが言った。
「うん、次のパーキングに寄る」
わたしはそう返す。
しばらく行くと、サービスエリア入り口の表示があったので、わたしはウインカを出してそちらに向かった。
最初に目についた空いた場所に車を停める。ふう。
車を降りたとき、足がガクガクする感じが少しした。ひさびさの運転で慣れぬ筋肉を使ったようだ。
ヌイとモルトも車から降りたが、なぜだかふたりはそれぞれ別々の方向に歩いていった。なんなんだろ、と思いつつもわたしはトイレに向かう。サービスエリアやパーキングエリアで降りたときはまずトイレに行くのが自分のなかでは鉄則だ。子供のころからの家族旅行でそう躾けられた。
用を済ませてトイレを出た。休憩所のほうに向かうと、表に出ている売店のひとつの前にモルトがいた。両手にひとつずつなにかを持っている。大きな団子の串焼きのように見えた。わたしが彼のほうに歩いていくと、気づいてモルトはその串焼きのひとつをわたしに差し出した。
「あ、ありがとう」
受け取ったそれは、団子ではなく、ジャガイモに衣をつけて揚げたもののようだ。わたしはそれにかぶりついた。モルトも同じようにした。
「ヌイの分は?」
わたしは尋ねてみる。
「ああ、ヤツは食べないと思うよ。少食だから」
「そうなの?」
たしかに最初にあのアパートで朝食を摂ったときには彼はロールパンひとつしか食べてなかったけども、それ以外のときは普通に食べていた。出されれば食べるって感じなのかな、などとわたしは考える。ま、旧知の仲であるモルトがそう言うのだからヌイが少食であることは間違いないのだろう。
ジャガイモ揚げはおいしかった。
食べ終わって串をゴミ箱に捨てていると、いつのまにかヌイが後ろに来ていた。
「あれ、ヌイ。どこにいたの?」
わたしの問いにヌイは黙ってサービスエリアの一角を指し示した。目を向けたが、そっちの方角にはただ植え込みがあるばかりだった。
わたしたちは車に戻った。
「運転、代わらなくていいのか」
そうヌイが訊いた。
「だって免許証、持ってないんでしょ?」
「俺たちの運転技能を疑ってるんなら、その心配はご無用だぜ? 悠香さん」とモルト。
「そうなの? でもそういう問題じゃないっしょ」
わたしは運転席に乗り込んだ。ふたりも元のようにそれぞれ座席についた。
ヌイが軽くため息をついたような気がしたけど、それを気に留めることなくわたしは車を発進させる。
ふたたび本線へ。もうほとんど他に車は走っていない。気は楽だが、速度をキープする指標が速度計しかなくなったのが地味に問題だった。いつのまにかゆっくりになってたり逆に速くなってたりする。そのことに気づいてからは速度計ばかりを気にして車を走らすようになった。たまに爆速で追い越されたりして、もっとスピードを出してもいいかなって思ったりもしたが、ひたすら安全運転に徹する。自分が世界に狙われているということを忘れるわけにはいかない。
延々と変化のない景色が続いた。
その変化のなさにいいかげんうんざりしてきたころ、料金所に到達した。
「あ、ほらほら、見て。『日本最北の料金所』だって」
そのわたしの言葉にモルトとバックミラーに映るヌイも窓の外を見たが、ふたりは特にそれについて感想のようなものを持たなかったようだ。わたしとしてはようやく北海道に来たという記念となるものを目にして微妙にウレシかったのだが。
そのあとすぐに高速道は終わりとなった。
「もっと北に向かうんだよね」
「そう」モルトが答えた。
わたしはカーナビの指示通りに右にハンドルを切った。国道に出たようだ。少し進むとカーナビはルート案内の終了を宣言した。高速の終端の先あたりを適当に目的地に設定していたことを思い出した。
「まっすぐでいいの?」
わたしはモルトに訊く。
「ん。もっともっと北だ」
言われたとおりに運転するしかない。
すぐに市街地に入った。ひたすら道沿いに進む。そのうちに市街地を抜けた。緑地が多くなる。しばらく進むと再び市街地。それが終わるとまた緑地。ほぼ道はまっすぐ。なるほどこういう感じは北海道ならではなのかも、と思った。市街地をいくつも通過する間に道がうねうねしないあたりが。
なにも考えずに真っ直ぐに進んだ。ふとカーナビの表示を見て気づく。
「あれ、いつのまにか別の国道を走ってる」
今まで走っていた道路は国道40号とかだった気がしたが、その40号は画面上の別なところを進んでいた。
「大丈夫なのかな」
わたしが口にすると、モルトもちょっとカーナビに目をやったが、
「北に進んでいる限りは大丈夫だろう」
と言うので、わたしはそのまま進んだ。市街地を抜け森林のなかを進む。開放的な気分になる。森林を抜けると今度はどこまでも農場が続く。見渡す限り農場。北海道に来たという実感が湧いた。
「あれ、また40号に戻ってる」
カーナビを見てわたしはそう口にした。まっすぐ走っているだけなのに車はいつのまにか国道40号を進んでいた。
標識を見るとどうやら近辺をバイパス道路が走っているようだが、とりあえずわたしはそのまま走り続ける。
さらに農場が続く。
しばらく進むとモルトが少しそわそわし出したように見えた。しきりに窓の外を見たりしている。バックミラーを見ると、ヌイも同じような感じだ。そろそろ目的地なのだろうか。
周囲が市街地になった。わたしはモルトとヌイの様子に注意を払いながら、まっすぐ車を進めた。
また市街地を抜けた。相変わらずふたりは落ち着かない様子である。
「どうやら行きすぎたみたいだ」
ようやくモルトがそう言った。わたしは焦る。
「えーっ、そうなの。どうしよ」
「どこかでUターンしよう」
後部座席から身を乗り出すようにしてヌイが言った。
そんなことを言われても、ひさびさに運転するペーパードライバーのわたしにその場で方向転換などという高度な技ができるわけはない。周囲には他に走っている車もゼロではないし。
どうしようと思いつつわたしは惰性でまっすぐ走り続けた。自分がパニクりぎみなのが自覚できてるので、ことさら無謀なことはせずに安全策をとろうと考える。
「慌てなくてもいいよ。ほら、そこに道の駅がある。そこの駐車場に入れて引き返せば」
モルトが言った。見ると確かに道の駅があったが、右側である。なにもないところで停止して対向車もある道路の右側の駐車場に乗り入れるのは難易度が高い。焦りつつ進むと道路に右折レーンがあったのでそちらに進んだ。だがそのレーンは道の駅に入るためのものではなく、その先にある信号を右折するためのものだった。いかんせん運転に慣れていないので、そのまま進むこととなる。その信号で右に曲がった。
「大丈夫。どこか停めやすいところがあったらそこにいったん停めて、そこから引き返せばいい」とモルト。
わたしは頷いてそのまま道沿いに進んだ。チラとカーナビを見ると、その先が大きな公園のようなところであることが見て取れた。
少し先へ進む。確かにそこに公園があった。幸いにもその公園の来客用らしき駐車場が左手にあったので、わたしはそろそろとそこに乗り入れ、車を停めた。ふう……。