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04/片羽の錬金術師②

ノヴィア・ファランドールの弟子と呼ばれる人間は少ない。


そのうちの一人は、ぼくである。




元王城の大魔導師。


元王城の大錬金術師。




ぼくを片羽の錬金術師と名付けた女。


狂乱妖精。あるいは、悪魔殺し。


不死の魔女……など。




師匠のあだ名は物騒なものが多い。




噂がすべて真実であるとは思わないが。


その気になれば単身で国を落とせる実力がある、と言われている。




国は言い過ぎだとぼくは思う。


けれども、都市を一人で落とせると言われたら信じてしまうぐらいにはヤバい人である。




彼女の弟子になるにあたって、ぼくが出された条件は二つ。


まず学園での三年間で基礎を学び卒業すること。


卒業後、彼女の工房で修行すること。




これが中々に大変だった。


まずは、魔力操作に始まり、魔導回路の組み方。刻印魔法の習得。呪術。付与術。錬成術。錬金術。薬学。魔法陣学。そして鑑定、あるいは解析魔法。


これらを基礎として習得し、この全てにおいて上位の成績を修めた上で卒業資格を得ること。




一年目は頭がパンクしそうなほど詰め込んで、詰め込んで、詰め込んだ。


二年目は驚くほどにのめり込んだ。


素養なしのぼくが、四大魔法以外の分野に於いては、ほぼ首席だった。




四大魔法以外の魔法は、魔術などと呼ばれて一つ下に見られているが、ぼくにとっては紛れもない魔法だった。




フローレンス先生もぼくに個人的に指導をしてくれた。


正しく恩人である。


ぼくの成績はフローレンス先生から師匠へと伝えられた。




王立魔導学園に入ってから三年目。


師匠と二度目の遭遇はひどいものだった。




「いつぞやの馬鹿な子どもじゃないか。中々にがんばっているようだが、本気で私の元へ来る気か?」




賢いが抜けていた。


ともすれば、ぼくのことを覚えていたかも微妙だったかも。




「いや、ファランドール様が出した条件じゃないですか。こっちは結局、精霊についても教えてもらってないんですよ」




「……条件……条件、ね。ま、教えてはやるさ、色々とな。まずは、家に了解をとれ。リリーズといえば風の大貴族だからな。学園は三年で卒業し、その後成人まではノヴィア・ファランドールの弟子になり国家錬金術師になります、と」




「国家錬金術師──いや、その前に成人するまでの二年間しか教えて頂けないのですか?」




「確か、ゆくゆくは、平民として暮らすつもりなのだろう?まず三年で結果を出して、次は二年間の修行で経験と肩書を手に入れろ。その後は一年でそれなりの結果を出せればいい。子どもにはわからんだろうけど、貴族には派閥があるし、なによりも面倒なんだ。まずは短時間で地位と成果を手に入れろ。一流になれれば、貴族でも口を出しにくくなる。それに儲かるぞ」




「地位と結果ですか……わかりました。では弟子にすると一筆書いて下さい。家との交渉に使いますんで」




「二年でそれなりに仕上げてはやるが、お前次第だ。弟子としての修行期間が短いほど、お前の評価が上がり、好きにやれるようになる」




「好きなように、ですか」




「あぁ、力をつけたら精霊を探しにだって行けるぞ?」




人を見下すような挑発的な笑みだった。


舐められているのだろう。




けれど、不快感はなく。見惚れしまうほどかっこいい。




学園三年目はそりゃあ、もう大変だった。


思い出したくないほどに。




二年間の修行。そして──八日にわたる学科と実技試験を経て、ぼくは錬金術師の国家資格を得たのだった。


取ってみてわかったのだが、難関と言われる試験だけはある。


この資格は凄い。




まず、社会的地位だ。


国が実力を認め、その実力を担保するのだから。


父も兄も国家錬金術師ということで家を出ることを許してくれたのだと思う。




まぁ、まさか家を貰うとは思っていなかったが。




試験結果発表の後、師匠のもとに行く。


どこか攻撃的で挑発的で獰猛な笑み。




「おめでとう。お前の努力の結果の一つだ。誇れ」




「まずは受かったかきかないんで?」




「あの程度の試験なら受かるさ」




「そうですね。ぼくは万能ではないですけど、そこそこ有能ですから」




なんだそりゃあ──と師匠は笑い。


ぼくは笑わなかった。




「──四大魔法の素養なしのお前は、自身を片羽と思っているかもしれんが、そこそこ有能なら胸を張れ」




「はい。ありがとうございます」




「片羽の錬金術師、か。中々カッコイイじゃないか」




そう言って歯を見せて笑う師匠はやはりかっこよかったのだった。






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